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ー崩落ー31

「気分の方はどうだ? 気分が良さそうならお粥温めてくるけど?」  和也は確かにその望の涙に気付いていたのだが、その話題には触れないように普通の会話にしたようだ。 「あ、ああ! 大丈夫! 食える! 食える!」  そんな望の方はこう焦ったように言い、いつも以上に明るく振る舞いながら答えるのだ。 「なら、良かった。 食欲が出てきたって事は元気になってきたって事だろうしな」  そこで和也は一旦言葉を切ると、 「分かった! お粥温めてくるな。まぁ、少しだけ待っててくれねぇかな? ああ! そうそう! お腹減り過ぎたからって布団なんか食うんじゃねぇぞ!」 「俺がそんな事する訳がねーだろが!」  そう和也の訳の分からないボケに本気で突っ込む望。しかもさらに和也の事をいつものように叩こうとしたのだが、和也にはそれを避けられてしまう始末だ。 「まだまだだなー! 完全に俺の事を叩けるようになったら元気になったっていう証拠になるんだけどな。いつもの望なら簡単に俺の事叩く事出来んだろ? やっぱ、早く元気になる為には飯食わないとなぁ!」 「分かってるから早く持って来いよ!」 「そんな体力じゃあ、雄介にもキス出来ねぇんじゃねぇ?」 「そういう事はいいから早く持って来い!」  和也にそんな事を言われてしまい、望の方はその雄介とのキスの事でも思い出してしまったのか、顔を真っ赤にしてまで叫ぶのだ。 「そんなに照れなくても今更だろ?」  そう和也の方は何か企んでいそうな表情をしながら部屋を出て行く。  望は和也が出て行ってしまった後、窓の外にある月を見上げ、ため息を漏らす。  だが今の望はさっきとは違い、穏やかな感じだ。  本当に和也という人物は空気を読んで無さそうで、完全にその場の空気を読んでいるようにも思える。今まで雄介が側にいなくて心の中がモヤモヤしていたはずなのに、和也が来てくれたおかげで気持ち的には晴れたような気がするからだ。  確かに望からしてみたら今日雄介がいないのは寂しいのだが、和也のお陰で紛れたようにも思える。 「和也が医者になった方が良かったんじゃねぇのかな? しかし、アイツは何で看護師になったんだろ?」  そう望が独り言を漏らした直後、部屋のドアが開く。 「望さん、大丈夫ですか?」 「ああ、昨日よりかは大分良くなったような気がするかな?」

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