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ー崩落ー44
その和也の言葉を聞いた途端に、裕実は表情を曇らせ、しばらく黙っていたが、意を決したように和也に視線を向け、
「このことを言って、和也は僕のことを嫌いませんか? これを望さんに話したら、望さんは全然気にしてないって感じでしたけどね」
「望が平気だったんだったら、俺も平気なんじゃねぇかな?」
「分かりました……では、和也にもお話しますね」
裕実はそう言うと、望に話したことをすべて和也にも打ち明ける。昔、いじめにあっていたことを話す裕実。
その話を聞いた和也は、
「なんだー、そんなことかよー。 そんなこと、大したことねぇじゃん。 過去がどうだったとしても、そんなお前のことが好きだって奴が目の前にいるんだろ? それに望も同意見だったんだろ? 過去のことなんかどーでもいいんじゃねぇか……今が幸せなんだったらさ。 ま、裕実の過去はそうだったのかもしれねぇけど、俺らは絶対に違うからな。 俺は性格もだけど、やっぱ顔も含めて裕実のことが本気で好きなんだからさ。逆に言えば、お前の嫌いなところなんか一切ないくらいなんだぜ。 まぁ、いつかそいつらもお前と同じ目に合うと思うしな。 それに、心に傷を負った人間っていうのは普通の人よりも優しくなれるんだから、もっと自分に自信持ってもいいんじゃねぇのかな?」
「分かりました! いつか、和也みたいな看護師になりますから!」
「なんだよそれー!」
「気に食わないんですか? 僕からしてみたら、和也は立派な看護師さんなんですからね」
裕実はそう言って和也に笑顔を向ける。
流石の和也も、裕実の言葉にはてなマークが浮かんでいるのかもしれない。首を傾げながら裕実を見上げているのだから。
「そこは、流石に秘密ですよ」
裕実は自分の過去を和也に暴露したことで気持ちがスッキリしたのか、いつも以上に明るい声で言ったが、急に恥ずかしくなってしまったのか、和也とは反対側を向いてしまう。
「もう、寝ないとですからね」
「あ、まぁ、そうだけどよー。 むっちゃ気になるじゃねぇか」
「和也って、人間観察は得意みたいなんですけど、自分のことになるとそこは鈍感ですよね」
さらに裕実は和也に謎の言葉を残し、先に目を閉じる。
「まったく……」
と、和也もため息を漏らしながら、裕実の体を抱きしめ、目を閉じた。
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