1176 / 1481

ー崩落ー48

 その和也の質問に、望は言葉を詰まらせる。 「ほら、やっぱりそうなんじゃねぇのか? なら、そういう事気にしないで望は治す事に専念すればいいだろうがー」 「分かったよ。本当に和也はうるさいんだよな」 「俺の方はうるさいって言われても結構。何でかって言えば、早く治ってもらいたいからさ」 「まったく、自分を犠牲に出来るお前って凄ぇよ」  望は大きなため息を吐き、和也とは反対側に向いて布団の中へと潜ってしまう。  和也はそんな望に向かって笑顔を向ける。  望がいじけたように見えるのだが、それは『分かったから、早く出て行け』という意味だろう。  和也が望の所から出ると、病棟内にはチャイムが流れ、面会時間だというのを知らせていた。  このチャイムと共にお見舞い客も病棟内に入ってきて、さらに騒がしくなる病棟。  各病室からは笑い声や雑談が廊下まで聞こえてくるほどだ。  和也がナースステーションに通り掛かった頃だった。急に前から走って来た人物とぶつかりそうになる。  その人物はGパンに黒のダウン姿。きっとそんな格好をしているのだから男には間違いない。だが、その男性が走っているので、和也も注意しなければならず、顔を上げると、そこには見慣れた姿があった。 「雄介!」 「なんや、和也かぁ」  お互い知り合いだと気付くと、ため息を漏らす。  だが、先に口を開いたのは和也だった。 「あのなぁ、雄介さ、そりゃ、早く望に会いたい気持ちは分かるんだけどさ……そのでかい図体で急ぐんじゃねぇよ。俺にぶつかりそうになったからいいものの、もし患者さんだったらどうする気だったんだよ」 「そりゃな、分かってねんけど、俺やってめっちゃ急ぎたいんやって……」 「そこは凄く分かってるって……だけど、ここは病院内。お前は元気なのかもしれないけど、他の患者さんはそうじゃないんだからなぁ」

ともだちにシェアしよう!