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ー崩落ー48
その和也の質問に、望は言葉を詰まらせる。
「ほら、やっぱりそうなんじゃねぇのか? なら、そういう事気にしないで望は治す事に専念すればいいだろうがー」
「分かったよ。本当に和也はうるさいんだよな」
「俺の方はうるさいって言われても結構。何でかって言えば、早く治ってもらいたいからさ」
「まったく、自分を犠牲に出来るお前って凄ぇよ」
望は大きなため息を吐き、和也とは反対側に向いて布団の中へと潜ってしまう。
和也はそんな望に向かって笑顔を向ける。
望がいじけたように見えるのだが、それは『分かったから、早く出て行け』という意味だろう。
和也が望の所から出ると、病棟内にはチャイムが流れ、面会時間だというのを知らせていた。
このチャイムと共にお見舞い客も病棟内に入ってきて、さらに騒がしくなる病棟。
各病室からは笑い声や雑談が廊下まで聞こえてくるほどだ。
和也がナースステーションに通り掛かった頃だった。急に前から走って来た人物とぶつかりそうになる。
その人物はGパンに黒のダウン姿。きっとそんな格好をしているのだから男には間違いない。だが、その男性が走っているので、和也も注意しなければならず、顔を上げると、そこには見慣れた姿があった。
「雄介!」
「なんや、和也かぁ」
お互い知り合いだと気付くと、ため息を漏らす。
だが、先に口を開いたのは和也だった。
「あのなぁ、雄介さ、そりゃ、早く望に会いたい気持ちは分かるんだけどさ……そのでかい図体で急ぐんじゃねぇよ。俺にぶつかりそうになったからいいものの、もし患者さんだったらどうする気だったんだよ」
「そりゃな、分かってねんけど、俺やってめっちゃ急ぎたいんやって……」
「そこは凄く分かってるって……だけど、ここは病院内。お前は元気なのかもしれないけど、他の患者さんはそうじゃないんだからなぁ」
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