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ー崩落ー51
雄介は微笑みながら言ったものの、望はまだツンとした表情で反対側を向いている。
「望がそないな態度を取るっていう事は……何か俺に言いたい事でもあるんやろ?」
そう言っても、望は反対側を向いたままだ。
「な、ホンマにどないしてん?」
雄介の困ったような口調に、望はようやく口を開く。
「な、何でお前はそんなに優しいんだ? たまにはさ、俺に怒ったりしねぇのかよ。ほら、自分の理想っていうのがあんだろ? そういう風にしてみたいとかって思わないのか?」
「何急にそないな事言い出してるん? 俺はそんな望が好きやからこそ、望の側におるんやろ? せやから、怒る必要なんかまったくもってないやんか……。それに、俺はホンマにお前のことが好きやから、あんま喧嘩とかっていうのはしたくないんやし、無駄に怒る必要なんてないやろ?」
「やっぱ、そこは和也と違う所だよな? 和也はさ、ダメな事はダメだって言ってくれるしな」
「な、そこは俺と和也っていうのは違う性格なんやし、俺は俺のやり方でお前の事を愛してるんやから、それはそれでええやろうが……。それに、ホンマ昔の誤ちはもうしたくないねん」
「なんだよ……その昔の誤ちって……」
望は興味を持ったのか、体を乗り出して雄介に体と視線を向ける。
「それはやな……望の方は覚えてないのかもしれへんねんけど……。望が記憶喪失になった時に俺は望から逃げ出して、和也に望の事を預けてしまったっていう事があったんだよ。そこで反省してな、これから望に何があろうと逃げ出さないっていう誓いをしたんやって。せやから、お前とはあんま喧嘩なんかしたくないって思うとるし、まぁ、自分の意見を押し付けるのもよくない事やしなぁ」
望はその雄介の言葉にひと息吐くと、
「雄介……ありがとうな。雄介がそんな想いで俺の事思っていてくれてるとは思ってなかったしよ」
望は顔を俯けて小声で言う。
「やっぱり、俺も雄介の事が好きだわぁ」
雄介はそんなふうに言ってくる望に微笑み、望の体を抱き締める。
「な、望……そういう事、無理して言わなくてもええよ……望が俺の事そない風に言わんくても、望が俺の事好きな事十分に分かってる事やしな。俺はホンマに望の事が好きやし、望がおるだけで毎日が幸せなんやからな」
望はその雄介の言葉に頷くと、キラキラとした瞳で雄介を見上げる。
雄介はその望の表情に一瞬戸惑ったが、望が何を訴えかけているのか、もしくはその瞳に引き寄せられたのか、そのまま唇を重ねる。
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