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ー崩落ー53

 穴があったら入りたいとは、まさにこの事なのかもしれない。  近くに穴はないものの、望は布団の中に身を隠すことにした。  そんな望の姿を見て、和也はクスクスと笑った。おそらく、望が和也の予想通りの行動をとったからだろう。  和也は布団に潜った望を見ながら、雄介に声を掛ける。 「ま、そういう事だからさ……程々にな……」  和也はそう言い残し、望の病室から出て行った。  雄介は一息吐き、布団から出てくるのを腕を組んで待っていた。  それから数十分が経った頃だろうか? 今まで動きがなかった布団が動き始め、その中から望がゆっくりと顔を出す。  望が覗いているのはカーテンだけで、周囲を確認するように目を動かしていた。  だが、その姿は雄介には見えていた。望はまだ雄介とは反対側を向いているため、雄介の姿を捉えていないようだ。  そんな望の様子に、雄介は優しい瞳で見つめている。  望はゆっくりと上半身だけ起こすと、雄介の方へと首を動かし、 「あのさ、今潜っていて考えてたんだけどさ……」  望はそこで一旦言葉を切ると、真剣な眼差しで雄介を見上げる。雄介もその望の視線に気付き、笑顔を向ける。 「な、お前さぁ、俺がこの病院でどういう立場って事知ってるんだろ? なら、病院で何でそういう話をするんだ?」  雄介は急にそんな事を望に言われてしまい、理解できない様子で首を傾げる。望の瞳を見つめるが、望の言葉が通じていない事に気付くと、視線を外して顔を俯かせる。  確かに、望にとってこういう話は苦手で、上手く言葉にできていないのかもしれない。だからか、更に言葉を砕いて言わなければならないと思い、望の頰はさらに赤らむ。  それから数分が過ぎた頃だっただろうか。二人の間には時間が止まったかのように感じられたが、望はやっと口を開く決心がついたようだ。再び真剣な瞳で雄介に視線を合わせると、意を決したように話し始める。

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