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ー崩落ー54

「だからだな……確かに……俺もお前の事は好きだよ。 だけど、世間的に考えてだな……俺達の関係がバレるのはヤバいだろ? って言ってんだ。 お前は別に病院関係者じゃねぇからいいのかもしれねぇけど、俺の方はむちゃくちゃ病院関係者だからさぁ、患者さんやスタッフさんにお前との関係がバレるとマズいんだよ。 そりゃ、理解してくれる人もいるのかもしれねぇけど、普通は理解してくれねぇ人の方は多いんだからな」  今日の望はいつもとは違い真面目な話をしている。 表情だって家にいる時とは違う感じもするからだ。 家にいる時の望というのは雄介に対して最近穏やかになった感じがするのだが和也に言われてからの望は真面目な顔と怒っている顔の中間点みたいな表情をしている。  そんな事を突然言い出した望に対して雄介の方は腕を組んで話を聞いていた。 「せやったな……確かに望の言う通りだわぁ。 今日の俺は望を前にして大人しく出来てなかった俺が悪かったしな」  雄介はそこまで言うと望に向かって頭を下げる。  流石の望も雄介に頭をそんな風に下げられてしまったらこれ以上言葉が出ないのかひと息だけ息を吐く。  しかし今の話で二人の仲が気まずくなったのは間違いない。  いや正確に言えば例えこの話が今の所で終わってたとしても、今日の二人にはこれ以上の話というのがないのかもしれない。  こんな話の後に雄介の方もふざける事なんか出来ないとも思ったのかもしれない。  二人の間にしばらくの間沈黙が流れてしまっている。 その間、二人の耳に入って来ているのはスピーカーから流れてきているクラッシックとお見舞い客の話し声しか聞こえてなかった。  せっかく忙しい二人にとっては丸一日以上経ってからの再会なのに嫌な空気が完全に流れてしまっている。  暫くして先に言葉を発したのは望だ。 「悪い……まだ、調子悪し寝るな」  そのたった一言だけ雄介に告げると望は再び布団の中へと潜ってしまう。 「ああ、まぁ、そうやったな。 今の望は病気だったんやっけな。 調子悪いのに邪魔して悪かったわぁ。 今日はもう帰るし、ゆっくり休んで早よ良くなってな」  雄介はそれだけ望に告げると椅子から立ち上がり病室を出て行く。  そんな雄介に潜ったままの望は布団の中で、 「雄介のバカヤロー……何でもう少し俺の側に居たいって言わないんだよ。 優しいんじゃねぇ……たまにはもう少し強く言って欲しい時だってあるんだからな」  そう呟く望。 雄介が言ってしまった後ではもう後の祭りだ。

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