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ー崩落ー56

「だから喧嘩はしてねぇって言ってんだろ! ただ、一昨日話をしてる時に空気が悪くなっただけだしよ。アイツ、優しすぎる性格だから今日来にくくなったんじゃねぇのか? 雄介はお前みたいに、昨日のことは忘れて笑顔で顔を合わせてくれるような奴じゃないからな」 「ふーん……そっか……。確かに、雄介は俺と似たようなところがあるような感じがしてるんだけど、やっぱり違うのかもな。ま、確かに雄介の場合には優しすぎるところがあるよな? あとは、なんだろうな?」  和也は望が何を言いたいのかを分かっているにも関わらず、手を顎に当てて考えるフリをしているようだった。だが次の瞬間、 「なるほどな……今、望が雄介に望んでいることが分かったような気がするわぁ」  その言葉に、望は和也の方へと視線を向ける。  本当にこういう話をしている時というのは、和也の方が色々と優位な立場にいるような気がする。  しかし、こんなに少ししか会話をしていないのに、本当に和也は望が言いたいことを分かっているようにも思える。  和也には人の心の中を読むような力があるとでもいうのだろうか? いや、望と和也はもう三年も付き合いがあるのだから、きっと和也は望のことをよく知っているということなのだろう。 「いいよ! 別に!」  望の性格は本当に分かりやすい。事実や自分にとって都合の悪い話になると、完全にへそを曲げてしまうのだから。  そんな望の様子を見て、和也はくすりと笑い、望がいる病室から出て行った。  和也にとっては、少し望と話をして雄介との今の関係が分かっただけで十分だったのかもしれない。  廊下を歩きながら、和也は手を顎に当て、小さな声で何やらぶつぶつと独り言を続けている。 「今回はどんなすれ違いがあの二人には起きてるんだ? 前の時は、雄介が勝手に何も言わずに大阪に行ってしまったことだったよな?」  和也は、今回の答えを導き出すために、今日望が言っていたことを思い出しているようだった。 「雄介が優しすぎるな。まぁ、確かに雄介は優しいんだけどさ。でも、雄介が優しいっていうのは分かり切っていることなんだろうけど……だけど、今日の望はそこを強調して言っていたようだったんだけどな」

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