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ー崩落ー58
和也がそこまで言うと、今まで怒りで顔を赤くしていた裕実だったが、和也の言葉が図星すぎて今度は恥ずかしさで顔を赤くしたようだ。
「ほらな……ビンゴ……」
和也はそう口にし、裕実の肩に腕を回して一緒にソファへと腰を下ろす。
「ホント、人間って言葉次第で災いを招くもんだよな?言葉一つで励ますこともできるし、逆に言葉一つで人を傷つけることもできるってことなんだよな?」
和也は裕実の顔を見ずに天井を見上げた。
人間は何かを考えている時、どこか一点を見つめがちなものなのかもしれない。
しかし、どうやら和也が裕実から視線を逸らしたのにはもう一つ理由があるようだ。望もそうだが、裕実もまた、顔を赤くした姿を見られるのを嫌がることを和也は知っているのだ。
だが急に話を変えた和也に、裕実は気付いたのか、いつもの表情に戻して言った。
「ですよねー。僕が中学校時代に苛められてた時も、暴力じゃなくて言葉の方の苛めでしたからね。暴力なら体に傷がつくので証拠や痕が残るけど、言葉の苛めはそういうのが残らないですから。よっぽどそっちの方がキツいんじゃないでしょうか?」
「まぁ、そうだよな。それでさ、話変わるんだけど……今日は珍しく雄介が望のところに来なかったんだよな。それを望に聞いたら、『雄介のこと聞くな!』って怒鳴られちまってさー。急に望がそのことで怒鳴ってきて、マジでビックリしたけど……それで逆に、望と雄介の間で何かあったって気づいたわけだ。つーか、あんなに望が怒るってことは理由はただ一つしかねぇんじゃねぇかな?」
和也はそこでひと息ついて言葉を続けた。
「ってかさ、望が雄介のことで怒る理由って、あの二人が喧嘩したとしか思い浮かばねぇんだけど……。望は、『雄介とは喧嘩していない。ただ単に帰っただけだ』って言ってたんだよな。だから、前みたいな喧嘩ではない。多分、なんかこう言葉を間違った風に受け止めてるのか?望の性格上、雄介に上手く言葉が伝わってないっていうのか?そんな感じなんじゃねぇのかな?今回のあの二人のすれ違いみたいな喧嘩はさ……」
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