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ー崩落ー59
「みたいですね。雄介さんが望さんのお見舞いに来ていないのは、おかしいですからね」
「……だな。とりあえず、あの二人の間に入って仲を戻さないとだよな? このままだと、望が退院した時に家に帰りづらいだろうしな」
「はい!」
裕実は、何だか急に嬉しそうな声を上げた。そして和也の方を見上げる。
「ってか、お前にしては積極的だよな?」
「だって、いつも雄介さんや望さんに助けてもらってばかりでしたから。恩が返せる感じがして、嬉しいんですよ」
「そういうことか。なんならさ、今回はお前が雄介に電話とかしてみたらどうだ?俺はもう二人をどうにかして戻す方法が頭の中にできてるからさ」
「和也の作戦ですか!? でも、たまに失敗するじゃないですかぁ?」
「それは大体、望のことをからかっている時だろ? 二人の関係になると別なのー」
「あー、確かにそうですね」
裕実は、どうやら和也の言葉に思い当たる節があるようだった。和也が言う通り、確かに望と話している時はからかっているようにしか見えないことが多く、失敗が多かったのかもしれない。けれど、雄介と望の仲を戻すときには百発百中で二人の仲を取り持っているように見える。
裕実は再び和也の方に視線を向けて尋ねる。
「……で、どうすればいいんですか?」
「そうだな……」
和也はひと息置くと、自分が考えている案を裕実に話し始める。
「雄介には、『今日望のところに来なかったみたいだけどさ、望は明後日退院予定だから、来るのか?』みたいなことを聞いてみる。それから先は、雄介の返信次第だな」
「分かりました」
裕実は携帯を取り出して、雄介へのメールの内容を書き始める。
裕実は雄介のメールアドレスを知っていたものの、これまで雄介とメールをやり取りしたことはない。普段、雄介にメールを送らない裕実が突然メールを送るのは少し不自然かもしれない。けれど、普段やり取りのない相手からメールが来れば、逆に「何があったのか?」と気になり、返信してくれるかもしれないと和也は考えたのかもしれない。そして、雄介もこれが和也の作戦だとは思わないだろう。
裕実がメールを送ってしばらくすると、雄介から返信があった。
裕実は携帯を手に取り、和也もそれを覗き込む。そこにはこう書かれていた。
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