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ー崩落ー61

『さっきのメールでわからないことがあったんですけど。「心配しないで大丈夫」っていう言葉です。それは、雄介さんが望さんのことを迎えに行くってことで大丈夫ですか?』  そう裕実が雄介にメールを送ると、数分後に雄介から返事があった。そして二人は再び一緒にメール画面を読み始める。 『当たり前やんかー。他にどんな意味があるっちゅうねん』  裕実は、雄介にすぐ返信しようと携帯のボタンを押した。 『ほら、雄介さんって消防士さんですから、今にも命を落としてしまうような仕事をしてますよね?だから、今日は怪我して行けなくて、それで、自分は怪我して行けなかったわけではないから心配しなくても平気です、って意味もあったのかな?とも思ったんです』 『まぁ、怪我の方は大丈夫なんだけどな……』  再び、喉に魚の骨が引っ掛かったようなメールの返事だ。 「なんでしょうねー。雄介さんからのメールの最後の『……』の意味。怪我はしてないけど……って、後にまだ言いたいことでもあるんですかね?」 「確かに気になるよな?」  和也は顔を天井に向け、手を顎に当て、完全に考える人になってしまっている。 「また和也ー、考えてるー! 和也は全然考える必要なんてないんですよ! 僕が雄介さんに聞いてみるだけなんですからね」 「まぁ、そうなんだけどよ。人には心の奥底にしまっておきたいこともあるだろうしさ、だから安易に聞いていいのかな? って思う時があるんだよな」 「和也、雄介さんからのメールの文面見てわかりませんか? 雄介さんの方は何か言いたいんですよ。今はまだ言うか言わないか、っていうのを迷ってる段階でもあるみたいな感じですけどね。その証拠にメールの文面の最後には『……』ってあるんですから。なので、僕の方は雄介さんにこの意味を聞いてみようと思ってるんですが……。こういう時というのは、無理やりではなく、自然に雄介さんから話せるような環境にしてあげるのがいいんだと思いますよ」  そんなふうに本気で言ってくる裕実に、和也はうなずいている。 「まぁ、そうだよな。雄介も嫌なことを溜めてしまうタイプだろうし、人間って愚痴を聞いてもらえたらスッキリするものだからな」 「ですよねー。とりあえず、後のことは僕に任せてくださいね」  裕実は和也にそう告げると、携帯の画面に集中する。  しばらくして裕実が顔を上げ、和也に笑顔で視線を向けた。 「こんな感じでいいですかね?」  裕実が考えた文面を、和也に見せた。

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