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ー崩落ー63

『あ、それはやな……』  本当にメールの文面だけでは相手の表情とかが分からないもんだ。  普通に相手の表情を見ながら会話をしているのであれば、言葉や顔色で何となく何が言いたいのかが分かるのかもしれないのだが、メールではそういう訳にはいかない。  こうなってしまった場合には文面から相手が何を言いたいのかを拾わなければならないだろう。 「それから、続きは?」  和也の方は裕実に先を促すかのように言う。 「分かってますよ」  裕実は雄介からのメールの文面を矢印キーを使って下へとスクロールすると、そこには、 『それの事な。なんやろ? 相談に乗って欲しい事があんねんけど……。しかし、よう『……』だけで俺が何か言いたい事がありそうって思ったな……』 「ですって……」 「やっぱり、雄介だよな。まぁ、望みたくめんどくさくなくて良かったぜ。望の場合はよ……なかなか口割ってくれねぇしな。それなら、雄介が言っている相談ってやつを聞いてやればいいんじゃねぇのか?」  それから裕実は雄介が言っている相談に乗って、雄介にアドバイスを送るのだ。  一方、和也の方はその雄介と裕実のやり取りを見てるだけだ。  きっと和也の中では裕実のそういった実力みたいなのを見る為と雄介からの相談内容を見る為だろう。  雄介の相談内容というのはやはり望の事だ。今望とは喧嘩している事を相談し今の望は雄介に対して何を考えているのかを聞いてきているようだ。 「そういう事な……雄介がずっと悩んできてた事っていうのはさ」 「みたいですね。和也は望さんが雄介さんに何をして欲しいか? っていうの分かりますか?」  「んー、わかっているような分かってないような? って所かな? それをさっきお前に言おうとしてたんだよ」 「そうだったんですか。じゃあ、雄介さんにはハッキリとしたような事は言えないって事ですね」 「まぁ、そういう事になるな……」 「一体、望さんは雄介さんに何を望んでいるんでしょうか?」 「それを一番に分かっているのは裕実なんじゃねぇのか? 一番望と同じ立場にいるんだからさ……」  和也のその言葉に裕実の方は考え始める。 「もしかして、和也は望さんが雄介さんに求めているものっていうのを分かってるんじゃないんですかね?」 「いや、全然わかってねぇよ。ただ、裕実が同じ立場だから裕実の方が分かるんじゃねぇかと思っただけだよ」

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