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ー崩落ー64

 どうやら裕実の見当違いだったらしい。という事は今回の二人の件に関しては裕実と和也が二人で組んで解決する方がいいだろう。 「僕が望さんの気持ちになってですか?」  裕実は天井にある蛍光灯を見つめ考える。  和也はそんな裕実の姿を見ながら裕実の答えを待っていた。  裕実が考えている間、部屋の中にある時計の秒針がカチカチという音を立てて時をただただ刻んでいた。  それからして裕実が和也の方に視線を向けると何か企んだような瞳で和也の事を見つめる。  そんな裕実の瞳に一瞬ビックリした和也だったのだが和也の方は裕実へと笑顔を向けるのだ。 「和也ー」 「何か思い付いたのか?」 「さっき、和也が言ってたじゃないですかー? 『望さんと似たような立場にいるから僕になら分かるだろ?』って……。そこで和也さんにお願いしたい事があるんですけど? まぁ、それは和也さんが言ってくれたヒントを元に考えた事なんですけどね」  裕実の方はそこまで言うと、どうやら今度は和也の動きを伺っているようだ。そこで一旦言葉を止めて和也の事を見つめる裕実。  和也は裕実が今何を言いたいのかを裕実の表情だけで読み取ると今まで横にしていた体を起こし真剣に裕実の瞳へと瞳を合わせる。 「分かりました。和也も僕が考えている事に賛成みたいなので、僕の考えを和也に話しますね」  裕実の方はもう一度和也の瞳を見つめ直すと口を開く。 「逆に言えば和也は雄介さんと同じ立場にいるって事なんですよね?なら、僕の方が望さんの役になりますから、和也は雄介さんの役になってもらえませんか?そしたら、今の望さんの気持ちになれるのかもしれませんから」 「なるほどなぁ、他人の立場になってみるっていうのも一つの手なのかもしれねぇよな?」  和也はその裕実の提案に腕を組んで今度は和也の方が天井の方に視線を向けて考え始める。 「ま、いいんじゃねぇ?時間がもう明後日までしかねぇから、明日実験してみるか?」

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