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ー崩落ー66

「なんだよー、明日までいらなかったんじゃねぇのか? このお風呂のことだけで分かったんだからよ」  和也は再び手を叩くと、ベッドの上に横になる。  すると、その和也の合図が届いたのか届いていないのかは分からないが、ちょうど裕実がお風呂から上がってきた。そして和也がいるベッドへと向かうと、今日は和也の方ではなく反対側を向いてしまう。  そんな裕実の行動に、和也は後ろから裕実を抱きしめる。 「なぁ、裕実……もう、望の気持ちにならなくてもいいんだぜ。これだけで雄介のことが分かったような気がするからさ」  和也の言葉に、裕実は顔だけを向けて答える。 「僕の方もなんとなくですが、分かったような気がします!」 「じゃあ、答え合わせするか?」 「はい!」  裕実はそう言うと、体ごと和也の方へ向け、和也のことを見つめる。 「とりあえずさ、望が本当に雄介のことが好きなら、今の雄介は望に対して押しが弱いんだろうよ」 「僕の方もそれは思いました! だって、先に和也がお風呂に入るって言って、それで、僕は断りましたよね? それで直ぐに和也がお風呂に行ってしまってから、僕の方は寂しく感じましたもん」 「だよな。やっぱ、今の雄介は望からしてみたら押しが弱くて、優しすぎるのが今の望にとっては問題なんだろうな」 「ですよー。でも、それをどうやって雄介さんに伝えてあげるんですか?」 「そうだな……」  和也は裕実からの問いに視線を天井へと向ける。  部屋内はすでに電気が消され、闇の世界となっているが、それが逆に考え事にはちょうどいいのかもしれない。 「あのさぁ、答えは分かったんだからさ、後は行き当たりばったりでいいんじゃねぇ? 明後日、雄介は病院に来てくれるって言ってたんだしよ」 「そうですね。でも、もし和也が雄介さんと会えなかったら?」 「大丈夫! その日はナースステーションで雄介が来るのを待ってるからさ。そうそう! 望がいる病室に向かうためには、そのナースステーションの前を通らないといけない訳だしな」 「分かりました。後のことは和也に任せますね。明後日は僕の方は病室の方に行きますよ」 「そっか……さて、問題の方は解決した訳だし、マジで寝ようぜ」 「はい……」  そして和也は、裕実の体を包むようにして眠るのだった。

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