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ー崩落ー67

 それから、望が退院する日。  望は顔色も落ち着き、今ではいつもと変わらない顔をしていたのだが、体が回復してもやはり雄介のことがあるのか、まだ浮かない表情をしている。  退院日が決まっていれば、何時に病院を出てもいいのだが、望は午後になってもぼーっと天井を眺めているだけだった。  やがて面会時間になり、チャイムとともに病棟の人口密度が増えて騒がしくなってくるのだが、望はまだそこから動こうとしない。やはり、そこで雄介が迎えに来てくれるのを待っているのだろうか。  その頃、雄介は一昨日和也に言われた通り、病院の入口まで来ていた。しかし、不審者のように病院内には入らず、入口付近をうろうろしている。  だが、雄介は急に顔を上げると、意を決したように傘を閉じ、やっとのことで病院内に足を踏み入れることができた。  今日は望の退院日だというのに、外はあいにくの雨模様。空は重たい雲に覆われ、行き来する人々の傘を濡らしていく。  雄介はその雲のように重たい足取りで病院内を歩き始めたが、望がいる病棟のナースステーション前で再びうろうろとし始める。  そんな雄介の様子を、和也はナースステーションからうかがっていたが、雄介は五分経っても十分経っても行動を起こさない。ため息をついた和也はナースステーションを出て、雄介に声をかける。 「よ! 雄介! 今日は望のこと迎えに来たんじゃねぇのか?」  いきなり背中を叩かれた雄介は、ビクッとして振り向くと、そこには和也が立っていた。 「……和也だったんか」 「そりゃ、ねぇだろ? 俺はここで働いてるんだから、いるに決まってんだろうが……。それにしても、さっきからお前はここで何してんだ? そんなに図体がでかい奴がずっとここでうろうろしてると、他の人から変に思われちまうぞ。ま、早く望の所に行ってやれよ。色々手続きは終わってるみたいだからさ……あとは会計して帰るだけみたいだしな」  和也はそこまで言うと、一旦言葉を切る。  そう、最後は雄介の口から答えを待つだけだからだ。

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