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ー崩落ー69
だが、和也はそんな雄介のオーラにも怯むことなく、
「あのさ……お前の悩み事が分かったんだけど……」
和也はそこで言葉を切り、雄介の反応を伺うことにした。雄介の反応次第では、話さなくてもよいかもしれないと思ったからだ。
しかし、その和也の言葉に興味を示したのか、雄介は目を見開き、和也の顔をじっと見つめた。
「言ってもいいけど……何を言っても怒るなよ……」
さっきまでは雄介が押しているようにも見えたが、今は和也が押しているように感じる。だが、これを雄介に伝えることで、雄介自身が傷つく可能性もある。
とりあえず、雄介が頷くのを見た和也は、仕方なく口を開いた。そして、先日裕実と二人で雄介と望を演じたときに気づいたことを話し始める。
「その演技をしたときに気付いたのは、お前が望に対して押しが弱いってことだったんだよ。優しすぎるっていうのもいいんだけど、それじゃ相手が不安になることもあるってことかな?だから、そこをお互い理解してなくて、すれ違いが起きてるんじゃねぇのか?それを望からお前に伝えるってことはしねぇだろ?」
雄介は和也の言葉を聞いて、頷いてみせる。
どうやら、和也の言葉を理解してくれたようだ。それに安心して胸を撫で下ろす和也。
「これで、お前が今悩んでいたことは解決できたか?だったら、これからはお前が望に実行してやればいいだろ?悪いけど、俺にはここまでしか言えねぇよ……後のことは二人の問題だからな」
「なんや、そんなことだったんかいな。もう、それくらいやったら警戒せんでも良かったって感じやけどな……。なんや、もっと変なこと言われると思っとったしな」
雄介は和也の言葉にスッキリしたようで、いつもの雄介を取り戻したかのようだ。
だが、雄介と和也が気づいたときには、周りにはギャラリーができていた。そして、その輪の間から裕実が、和也と雄介の方へと近づいてくる。
「梅沢さん! 何してるんですか!? ちゃんと仕事してくださいよー!」
裕実はそう言って和也の手を取ると、その輪から和也を引っ張り出した。
「ちょっと待てよ……。俺はお前のおかげでこの輪から抜け出せたけどさ、雄介はどうするんだ?急に目の前に人がいて恥ずかしい思いしてるのは雄介だろ?」
和也は小さな声で裕実に話しかける。
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