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ー崩落ー71

「まぁ、それが和也の性格ですからね」 「せやな。ほな、スッキリしたところで望のとこに迎えに行こうかな?」 「早く行ってやれよ。絶対にお前のこと待ってるだろうしさ」 「ああ……」  雄介は和也たちに笑顔を向け、スッキリとした表情で望の病室に向かった。だが、次の瞬間、雄介は顔色を変え、慌てて和也たちがいるナースステーションへと戻ってくる。 「あー! もう! な、望が病室におらんかったんやけど?」 「はぁ!?」  雄介のその報告に、和也は裏声を上げた。 「おかしいな? 昼過ぎまでは病室にいたはずなんだけど……。だって、今日は俺、ここで仕事してたからさ。この前を通り過ぎれば、例え下を向いて仕事してても気づくと思うんだけどな」 「……ってことは? さっき、二人が騒いでいる間に望さんはどこかに行ってしまったんじゃないんですか?」 「確かに、それしか考えられねぇんだよな……」  和也はチラリと雄介の方を見て、 「ま、後のことはお前らで何とかしろよ。俺たちが雄介の家に一緒に行くのはさすがに不自然だからな」 「それは……分かってんねんけど……」  雄介は憂鬱そうに呟く。 「確かに、雄介一人で望との溝、っていうか、話し合いがうまくできるかはわかんねぇけどさ。もう、俺たちにこれ以上アドバイスすることもないし、これは二人だけの問題だ。ってか、雄介がそんなに弱気でどうすんだよ。とりあえず、望が何を望んでいるかは分かったんだから、それを実行するだけじゃねぇのか? 今の雄介なら、望の気持ちを動かせると思うぜ。大丈夫だって!」  和也は雄介に力強くアドバイスを送る。 「せやな……ほな、頑張ってくるわ。後で和也たちに報告するな……」  雄介は笑顔を見せ、ついに病院を出ることにした。  病院の入口に出ると、まだ雨が降り続いている。  雄介は持ってきた透明な傘を開く。  雄介は普段、傘にはあまりこだわらない。安くても体が濡れなければそれでいいと思っているからだ。  しかし、今日の雄介にとってこの透明な傘の選択は少し間違っているようにも思えた。透明な傘の先に重たそうな雨雲が広がり、雨の日というのは憂鬱な気分を更に深くさせてくれるように感じる。

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