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ー崩落ー74

 そんな時、突然、 「雄介……」  と望が声をかけた。考え事をしていた雄介はハッとして我に返り、 「……え? あ、何?」  と少し遅れて返事をしたが、まだどうしたらいいのか分からず、その場で立ち尽くしていた。 「雄介……俺が入院している間に、和也に色々と俺のこと聞いたんだろ? だったらさ、和也の助言通りにしてみたらどうだ?」  望はさっきの和也と雄介の会話を聞いていたようだった。  雄介は言い訳をせず、素直に答えた。 「さっきの俺たちの会話、聞いてたんやな?」 「聞くも何も……通り過ぎた時に聞こえてきただけだ」 「なら、話は早いわなぁ」  そう言いながら雄介は一歩ずつ望の方へと歩みを進めた。望の言葉に安心したのか、雄介は近付くと、布団の上から望の体を抱きしめた。 「さっきの話やけど、和也が言ってた通りでええってことやんな? 今回の望と俺とのすれ違いっていうのは……」 「ホント、和也ってすごいよな? うん……そう……実は和也の言う通りなんだよ。これを俺の口から言うのは恥ずかしいんだけどな。でも、雄介には誤解してほしくないって思ったから」 「ホンマ、そういうとこ鈍感でスマンな。でも、俺からしてみたら優しくするのが俺の愛し方なんや……それじゃアカンか? 嫌われたくないって思いもあるし、人が嫌がることも無理強いも俺は嫌いなんや」 「でもさ、和也にそれ言われたんだろ?」 「あと、昔付き合ってた女性にも言われたわぁ。『優しすぎて押しが足りない。見た目は男らしいけど、中身は男らしくない』ってな」 「それ、別れ際に言われたのか?」  急に笑い出す望。雄介は驚きつつも続ける。 「そうなんやって……」 「だけどさ、俺は雄介とそれだけで別れる気なんかないぞ」  その望の言葉に、雄介は思わず首を傾げた。 「お前なぁ、そこは別に首を傾げるとこじゃねぇだろ? 俺はお前とまだ一緒にいたいって言ってるんだからさ」

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