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ー崩落ー81
ちょうど、望が座っている座席の下に荷物を入れる部分がある。そこに辿り着いた裕二と歩夢。
どうやら歩夢は、望が下を覗き込んでいる姿に気づき、笑顔で手を振ってくるのだが、望はその歩夢の行動を無視し、視線を外した。
「ホント、お前の弟って相変わらずなんだな」
和也も一緒にその歩夢の行動を見ていたらしい。歩夢の姿にため息をついた直後、和也は背後に気配を感じて振り向くと、そこには歩夢が立っていた。
「和也……あのさ、僕、兄さんの隣に座りたいんだけど……変わってくれない?」
まだ和也とは今日で二回しか会っていないというのに、もう歩夢の方は和也を名前で呼んでくる。
さすがの和也も、まだ二回しか会っていない上に歩夢が自分より年下であるため、名前で呼ばれるのは気が進まないのか、苦笑いを浮かべながらも言った。
「歩夢君……俺の方が年上なんだけど……?」
「あー! そんなこと? ホント、日本人って冷たいよね? ってか、和也には細かく説明しないとわからないのかな?」
そう言いながら、歩夢はちゃっかりと補助席を開き、そこに腰を下ろして腕と足を組んだ。
「アメリカでは基本的に名前なんかはファーストネームで呼び合うんだよね? だから、和也でいいんじゃないの?」
「お前はアメリカ育ちなのかもしれねぇけど、ここは日本なんだからな……日本流に従えっての!」
和也は望を守るかのように正面を向いて座った。
「日本って冷たいよねー。アメリカなんかはどんな年の人でもフレンドリーって感じだったのにさ。じゃあ、仕方ないなぁ、ここは日本だからね。梅沢さんの言う通り、梅沢さんって呼んだ方がいいってことなんだね?」
歩夢は「これで満足?」とでも言いたげな表情を和也に向けた。
こう言われてしまっては、和也も文句の言いようがないようだが、どうも納得はいってないらしい。
「ところで、梅沢さん……。あのさ、梅沢さんの場所、交代して欲しいんだけど……? 僕はさ、帰国してきてからあまり兄さんと話してないから、話したいんだよね?」
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