1215 / 1481
ー崩落ー87
「やっぱ、トンネルだよな? 耳が聞こえづれー!」
和也は何とか欠伸をしながら、どうにか聞こえやすくしてみるのだが、なかなか治ってこない。
「暫くすれば治るから大丈夫だろ?」
「まぁ、そうなんだけどよ……」
すると和也はお菓子を口の中へと運ぶ。
と、そんな時! いきなりバスは大きく揺れ、一瞬にしてバスの灯までも消えてしまうと辺り一面闇の世界が広がってしまったようだ。
一体、バスの中で何が起きてしまったのであろうか?
暫くして、声を上げる人物がいる。
今まで明るかった世界は一体何処に行ってしまったのであろうか? 今まで一緒に居た人達までもこの闇の中では見えやしない。
その人物は目がこの暗闇に慣れるまで暫く待っていると少しずつではあるのだが辺りが見えて来たようで自分の隣にいる人物に声を掛けるのだ。
「和也! 和也!」
望は和也の体を揺らし、ありったけの声で声を掛けていると、
「……ぁ……っ! え? ちょ、望? 何があったんだ?」
そういつもと変わらないような声が返ってきて、そこに胸を撫で下ろす望。
「良かった……とりあえず、生きてたみたいでさ」
そう望が独り言のように呟いていたのを聞いていた和也だったのだが、やっとの事で和也の方も周りを見渡す。
「……って、望、何があったんだ?」
「俺にもまだ何が起きたなんて事は分からないんだけどさ……気付いたら、こんな闇の世界が広がってたって所かな? だけど、さっきまでバスの照明は点いてて、今は点いてないというのかバスでさえ動いてないんだから、事故でもあったのかな?」
「まぁ、そうなのかもしれねぇよな? とりあえず、バスの中の人間は無事なのか?」
「……って、和也がまずそこを立ってくれねぇと、俺が通路側に行けねぇんだけど……」
「ああ、そうだな。 ゴメン、そんな事に気付かなくってさ」
二人は足元さえまだ見えない状況なのだが、二人で通路側へと立ってみる。
「あ! そういや、裕実は?」
急に和也は思い出したのか、慌てた声を上げて望の後ろの席に裕実がいたのだから、一旦望が座っていた席に行くと和也は裕実の体を揺すり起こしてみる。
すると僅かではあったのだが体が動き、次の瞬間には辺りを見渡している裕実の姿に和也は安堵する。
「裕実、大丈夫か?」
今まで裕実の方も何が起きたのか? と思いながら辺りを見渡してたのであろうか。 それとも和也の声に安堵したのかは分からないのだが、裕実は和也の方に視線を向けて、
「僕の方は大丈夫みたいなんですが……一体、何が起きたんです?」
ともだちにシェアしよう!