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ー崩落ー89
しばらくの間黙っていた歩夢だったのだが、観念したかのように、
「頭打ったみたいなんだけど……」
「そっか、分かった……」
和也はその歩夢の言葉に頷くと、歩夢の肩を軽く叩き、
「確かに、お前の治療をしてやりてぇんだけど……とりあえず、先ずはここからの脱出方法を考えないと……な。 この暗闇の中で今は治療なんて事出来ねぇしさ」
和也は立ち上がると辺りを見渡す。 そして望の姿を見つけると、
「望! みんな無事そうなのか?」
「……いや……大丈夫じゃねぇよ。 前方の席の方が後方の席よりもヤバい状態なんだけど……」
「何がヤバいんだ?」
「ああ、運転席から三番目辺りの座席まで天井がへこんじまってるからな」
「……そうなのか? って、おい、お前の親父さんってその前の方の席にいなかったか?」
そう恐る恐る聞く和也。 確か裕二は左側の一番前の席に座っていた記憶がある和也。 望が言うように前から三番目までの席のバスの天井が崩れてしまっている状態という事は、その三番目以内に裕二の席も入っていた筈だ。
「どうだろうな……? 今、確かめに行ってる所だ……」
その望の言葉に和也の方も望の所へと向かう。
「何だよ……前の方はこんなにも酷い状態だったのか? 天井が手の届く範囲にまで押し寄せてんじゃねぇか……」
「車の追突事故っていうよりかは……上から何かが落ちてきてるって感じだよな?」
「トンネルの中だから、トンネルとか山が崩れたっていう感じだよな?」
「だな……」
望はそう答えると、やっとの事で裕二の腕を掴む事が出来たのであろう。
「とりあえず、親父は大丈夫みたいだ……脈がちゃんと動いてるしな。 逆にこの状況だと親父を動かさない方がいいのかもしれない。 今のこの状況では親父に何が起きてるのかが分からないからな。 頭とか打っていて気を失ってるかもしれねぇし、それで急に体とか動かしたら、もしかしたらヤバい事になるかもしれねぇしな。 今のこの状態ではここで救助隊を待った方がいいのかもしれねぇな」
「望の親父さんも大丈夫そうなら、とりあえず、俺達動ける人間はバスからの脱出方法を考えておいた方がいいんじゃねぇのか? ほら、バス以外でも怪我人いるかもしれねぇしさ……」
「そうだな……」
とりあえず、望と和也は元いた席の方へと戻ると、
「吉良先生に梅沢さん! バスの後部座席の方にある非常扉開けておきましたから、バスから脱出しませんか?」
「ああ、ありがとう」
望はそう言うと、和也と共に一旦バスから降りてみる事にしたらしい。
だが、これで助かった訳ではない。
更にバスの外は悲惨な状態になっていた。
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