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ー崩落ー90
数台の車はペチャンコに潰れ、またトンネルの中程ではガソリンに火が引火し始めているのか、数台の車が燃え始めている。 そしてこのバスの前方部分は岩に乗っかってきていて、完全に前方部分を潰していた。
「和也の言う通り、トンネルが崩落してるみたいだな」
「ああ、しかも、トンネルの入口部分方面も出口方面も塞がれちまってるんじゃねぇのか? 前方部分はガソリンで火の海化してきてるし、後方部分は土砂で埋まっちまってるしな……やっぱ、ここで助けを待つしかねぇのかな?」
「でも、ここで悠長に待ってる暇なんていうのはねぇんじゃねぇか? 今はまだ前方部分の方しか引火してねぇけど、いずれここにもその炎が来て引火する可能性だってあるんだしよ。 火もやべぇけど、引火して出た煙を吸うのもかなりヤバいしな」
そう言いながらも望はその煙をちょっとずつ吸い込んでしまっているようだ。 望も咳き込み始める。
「お前なぁ、恋人に消防士がいんのに、まともに煙を吸い込んでんじゃねぇよ! ハンカチとかが無い状態なら、せめて服の裾を顔に当てて、煙をあまり吸い込まないようにした方がいいんだろうが……。 このままじゃあ、お前まで参ってしまうぞ!」
「うるせぇー! そんな事分かってるんだよ……」
二人がそんな言い合いをしていると、歩夢が突然望と和也の間に入って来て、
「今はそんな事言い合ってる場合じゃないでしょう! とりあえず、兄さん達は怪我人を助けに行かないとなんじゃないの?」
「お前が口出すんじゃねぇよ。 あのな……確かに怪我人を助けたいのは山々なんだけどな、だけど、こんな状態じゃあ医者がいたって無駄って所だな。 医療道具も無い状態だしよ。 それに、何も治療道具も無い中で『私は医者なので大丈夫ですよ』って言ってみろ。 変に期待持たせちまうだろ?」
「じゃあ、兄さんは怪我人を見殺しにするつもりなの? 今の兄さんの言葉だとそういう風にも聞こえるんだけど……」
「本当に分からない奴だなぁ。 俺だって目の前にある命は助けたいって思ってるの決まってるだろ! だけど、何も無いんだから助けようがないって言ってるだけだ!」
「じゃあ、バスの荷物入れに父さんが持って来てる医療道具があるって言ったら?」
その歩夢の言葉に望は途端に顔色を変え、歩夢の胸倉を掴むと、
「それを早く言えってぇの! お前はなんでそんな重要な事を早く言わねぇんだよ! 意地悪で言わなかったなんて事言わせねぇぞ! 今は人の命が掛かってる状況なんだからなっ!」
「兄さんの事だから知ってるって思ってただけだし……。 だってさ、父さんの荷物一泊だけだっていうのに荷物が多いな? って気付かなかったわけー?」
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