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ー崩落ー91
歩夢の言葉というのは本当に腹が立つ。 だが確かに今、望は歩夢に文句なんて言っている場合ではない。 歩夢からその話を聞くと掴んでいた胸倉を離し、
「和也! 歩夢の今の話聞いてたんだろ? バスの荷物置き場に行くぞ!」
「ああ……」
望は和也にそう声を掛けると、和也は裕実に声を掛け、裕実は颯斗に声を掛ける。 こうして四人はバスの荷物置き場へと向かうのだ。
そこに辿り着いたのはいいのだが、まだまだ壁があることになる。
いつもなら簡単に人の手で開くようになっているのだが、今はこのバスに岩が直撃していたからだろうか。 荷物置き場の扉は変に曲がっている。 そのためか、開けるのにも苦戦しそうな状態だ。
「なんだよー、せっかく、みんなを助けられるチャンスだと思ったのによ。 こんなに曲がってしまってる状態じゃ、ここ開かないんじゃないのか?」
そう和也にしては珍しく悲観するように言うのだが、扉の前にいる颯斗は違う言葉を口にする。
「何とか、四人で力を合わせれば開けられるんじゃないでしょうか? まあ、ロープとか生きてる車があれば簡単に開くのかもしれませんけどね。」
「生きてる車か? ほとんどの車がダメになってる状態で、そんな車あんのかな?」
「ちょっと! 和也! 今の和也の状態っていうのは、いつもの和也らしくないですよ! どうして、今日の和也はそんなに絶望的なんですか?」
「この状況では、流石の俺だって絶望的になるに決まってるじゃねぇかよ。 いつ助けが来るかも分からないし、出口もねぇ! 仮にその扉が開いたとしても、人は助けられないのかもしれねぇんだぜ。」
そんな時、望が口を開く。
「何もやらないよりかは、やった方がいいんじゃねぇのか? 例え、俺たちが死んじまってもな。 だけど、俺は雄介に賭けてる。 きっと、雄介が助けに来てくれるって信じてるからな」
「そうですよー! 和也! 雄介さんのこと信じられないんですか!?」
その望と裕実の言葉に、和也はやっと考えることができたのか、納得したような表情をすると、
「そうだな……雄介なら必ず助けに来てくれるだろうしな! 俺たちの方は中から助けていかないとだしな。 雄介たちが何日かかろうとも、俺たちは雄介たちを信じて待つしかねぇんだしな」
「そういうことだ」
「そういうことですよ」
「ああ! よし! やるぞ!」
和也はやっとのことでスイッチが入ったのか、
「とりあえず、望と裕実は生きていそうな車とロープか何か持ってる人を探して来てくれねぇか? 俺と新城は、望たちが戻ってくるまでの間、自力で開けてみるからよ」
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