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ー崩落ー93

「ああ! おうっ!」  和也は一旦扉から離れ、望がいる車の方へと寄り、望からロープを受け取る。 「これで、開けられたら助ける事が出来るんだけどな」 「ああ……」  二人は笑顔になるのだが、和也の手に気付いた望は、 「和也ー! その手はどうした?」  和也の手は痙攣していて、爪先は割れ血が流れているのが望の瞳に入ってくる。 「今はそんな事を気にしてる場合じゃねぇだろ? 怪我してない俺達が動くしかねぇんだからよ。 この状況でこれくらいっていうのは怪我のうちに入らねぇんだよ」 「だけど……さっきまではそんな怪我してなかっただろ?」 「あ、まぁ……扉を開けた時に怪我しちまってな……それでだからさ」 「あ、うん……分かった。 とりあえず、よろしくな!」  望は和也にまだ何か言おうとしたのだが、これ以上和也に何か言っても話は平行線のままになると思ったのか、そこで話を切っておいて、後は和也に任せる事にしたらしい。  暫くして、 「望! 車動かしてみてくれよ」  その和也の言葉に、望はアクセルを踏んで車を前進させると、さっきまであんなに苦戦していた扉がすぐに開いてくれたようだ。 そして中にある荷物を出す事が出来たようだ。  それに、そこにいた四人は安堵のため息を漏らす。 「よし! 後は治療道具を出して……」 「和也の方は荷物出しておいてくれよ……俺の方はまだまだやる事あるしな」  そう言う望の意味が分かったのか、和也は望に向かい笑顔を送る。 「和也! じゃあ、僕たちの方は治療道具を持って、非常用出口の方に向かいましょう!」 「あ、やっぱ、俺は今望がやろうとしてる事を手伝った方がいいかな? ほら、俺と裕実は看護師だろ? 医者を手伝うって事しか出来ねぇからさ……それだったら、今望がしようとしている事を手伝った方がいいのかな? って思うしな。」 「確かにそうですよね!」  裕実は和也のその言葉に頷くと、先に颯斗と医療道具が入っている鞄を持って非常用出口の方へと向かうのだ。 「望! こっちはいいから、お前は怪我人がいる非常用出口の方に向かえ! お前の親父さんは俺がそこに連れて行くからよ!」 「いいんだよ……俺の親父なんだから、俺が助けるんだからな!」  その言葉に、そんな事を口にする望。 和也は一瞬その望の言葉に目を丸くしたのだが、 「俺が先にあそこに行っても仕方ねぇんだよ! 俺等看護師じゃあ医者の手伝いをする事しか出来ねぇんだからな。 お前は医者だろ? 最後まで治療出来るのは医者しかいねぇんだから、医者があそこに行った方がいいだろうが……。 確かに望の親父さんは望からしてみたら大事な人かもしれねぇけど、それと同じくらいに患者さんの命だって大事なもんだろうがっ! 親父さんを助けるのは俺だって何とかなる。 だがな、患者さんの方は最後まで治療が出来る医者にしか出来ない事なんだから、お前が行った方がいいんじゃねぇか? って言ってるんだよ!」

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