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ー崩落ー97

 望はそう独り言を漏らすと、それと同時にため息を漏らす。 「俺がお前等に話す事はねぇの……普通に俺が和也より雄介の事が好きになったって事だけだからな」 「じゃあ、雄兄さんの魅力って何?」  歩夢という人間はまだまだ大人的な考え方ではないのか、変化球ではなくこうストレートに質問してくる。  その質問に再びため息を漏らす望。 「お前さぁ、大人なのか? 子供なのか? ハッキリしてくれねぇもんかな?」 「何が言いたいのー? 言うけど……僕は法的にはまだ子供なんじゃないの? だって、二十歳にはなってないしね」 「あ、ああ……まぁ、そうだったな。お前はまだまだ全然ガキだよ。しかも、世間や恋愛に関しては特に子供的考えだよな。だから、大人の恋愛に口を出すのはまだ早いんだよ。だから、和也との過去の話はしない」 「でもさ……そういう事を聞いて大人になっていくもんなんじゃあないの? なら、分からない事があれば大人に聞いた方がいいんじゃない? "聞かぬが一生の恥"って言うしねー」  本当に歩夢はアメリカ育ちなんだろうか。意外にも日本語を知っているようにも思える。 「なぁ、歩夢。お前、本当にアメリカで育ったのか? 逆に俺がお前に質問をしたいんだけど……お前が日本に来て、まともに話した事もなかったしな」 「僕の事ならいくらでも話してあげるよ。その代わり、兄さんと梅沢さんの事も聞かせてね」  と歩夢は勝手に商談成立させると望の隣に座って、 「さっきの質問だけど……僕はアメリカで生まれてアメリカで育ったんだけどー、日本人学校に行ってたしー、確かに友達と遊ぶ時は英語だったけど、家でも学校でも日本語で話してたからね。日本語は余裕だけど……? 他に質問ある?」 「あ、えーと……」  それ以外に望は質問がないのか、他に歩夢に質問はないようだ。 「なら、兄さんと梅沢さんの話!」  歩夢は瞳をキラキラとさせながら望の視線へと合わせる。 「ちょっと、待って! まだまだあるんだからよー。ただ、何を質問するかを考えているだけだ……」  そう苦しい言い訳をする望。本当はそれ以外の質問は出てこないようだ。 「はい! ブッブー! ゲームオーバー! 本当は質問がないのにただ単に質問を考えてるだけだしー!」 「何で……そんな事、お前に分かるんだよ」 「はい! 引っかかった!」 「はぁ!?」 「兄さん……分かってないの?」

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