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ー崩落ー99
望や歩夢に関しては、目の前に身内がいるため、望のところには電話が逆に掛かってこなかったということだ。唯一、母だけが事故に巻き込まれていないのだが、テレビのニュースを見ていなければ連絡してこないのだから。
望たちと一緒に旅行に来ている医者や看護師たちの中には、携帯で外部と連絡を取っている者も何人かおり、バスツアーのメンバーについての話も外部に伝わっているのだろう。
「やっぱり、俺たちの名前も上がったな」
「ああ」
だが、その時、テレビの端にもの凄い形相で報道陣に近寄る人物が映っていた。
「まさか、あれって、雄介なんじゃねぇか?」
「だよな……。アイツ、作業抜け出して何してんだ?」
ちょうどその時、別のアナウンサーがレスキューの服を着た雄介に気付いたのか、彼に近付いていった。
「救助隊の活動は大丈夫なんでしょうか?」
アナウンサーは作業状況を聞きたかったらしいが、雄介の方は、
「今はそんな事、関係ないんやって! ちょっと、トンネル内にいる人達の名簿見せてくれへんか?」
「さ、さすがに個人情報なんで勝手に見せることは出来ませんよ」
「さっき、隊長にちょろっと聞いたんやけど、『春坂病院の医師や看護師達』がこのトンネル事故に巻き込まれているかもしれへんってな。その中に俺の知り合い……あ、いや……俺の大切な人がおるかもしれへんのや。せやから、見せてくれへんかな? それに、今日はバスで旅行行くとも言っておったしな」
その真剣な雄介の表情にアナウンサーは名簿を見つめる。
「確かに、春坂病院の方々はこの中にいるようですよ。名簿にも『春坂病院』ってありますしね」
「せやから、その名簿見せてくれへんか?」
「さすがにこれをお見せすることは出来ませんので、私がお名前を申し上げるという形でよろしいですか?」
雄介は、とりあえずそれで手を打つことにしたのか、頷いて了承する。
アナウンサーが『春坂病院』の医師たちの名前を読み上げると、
「やっぱりな……俺にとって大切な人がおったわぁ」
雄介は急に目つきを変え、アナウンサーへと頭を下げる。
「突然、失礼なことを言ってしまい申し訳ございませんでした。救助隊の方は全員で力を合わせ救助している最中に、自分が心を乱してしまい申し訳ございません。今から私は救助の方へ戻り、トンネルの中にいる方々を早めに助けるよう努めて参ります」
そう雄介は言うと、足早にトンネルの方へ向かうのだった。
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