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ー崩落ー101

「ああ、分かった……中の状況を教えてくれてありがとうな。それと俺はホンマにお前ん事、愛しとるから、絶対に助けてやるしな!」  その真剣な雄介の言葉に、望も答えるかのように、 「ああ、俺はお前が助けてくれるって信じてるから。その……俺からしてみたら、雄介も大切な人だからよ」 「ん?」  そう雄介は言ったものの、 「話は済んだんだろ! 早く俺等を助ける為に作業しろよっ!」  望はそう電話口で叫ぶように言いながらも、顔を真っ赤にしている。 「ああ、早めに助け出して……望ん事、抱き締め……」  雄介が最後まで言わないうちに、望は電話の電源ボタンを切るのだ。 「今の電話、雄介からだったんだよな?」  そう望が電話を切った後に声を掛けてきたのは和也。 「別に誰だっていいだろうがー」 「望が顔を赤くする相手って言ったら雄介しかいないだろ?」  その和也からの問いに、望は視線を外し、さらに顔を赤らめる。 「ほらな、やっぱり……。別に雄介から電話がかかってきてる事を隠さなくてもいいだろう? ま、そこはいいんだけどさ……で、雄介の方は作業進んでるのか?」  和也は望がそういう話が苦手という事を思い出したのか、敢えて話題を変える。 「あ、聞くの忘れてた。雄介が変な事言って来るからよ」 「愛してる……とかか!? ま、それはいいけどさ……マジでそろそろ本格的に中の方もヤバくなってきたみたいだぜ。さっきから暑くなってきたしな」  和也は望にそう話しかけながら、辺りをキョロキョロと見渡す。 「確かにな……コートなんかいらない状態になってきているのかも」  望は体の中に涼しい空気を取り込む為に、前襟を掴むと手で仰ぎ始める。 「何とかさっきは助かったものの、また危なくなってきてるって事か」 「とりあえず、体力もあんまり使わない為にも、今はまだ俺達の方もゆっくりしていた方がいいのかもしれないな……」 「ああ……」  望と和也は再び裕実が座っている場所へと向かい、腰を下ろす。  それから望達は助けが来るまでの間、何も状況が変わらないままひたすら助けが来るのを待っていた。  暫くすると、みんなが持っていた携帯の充電も切れてしまったようで、電話の着信音やメールの着信音までも聞こえなくなり、今では人々の話し声だけが聞こえてくる。

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