「しかし、俺達……事故に遭ってからどれくらいの時が経ってるんだろうな？」 「分からねぇよ……今はもう携帯も無いんだからな」 「だよな……」 　フッと和也はため息を吐こうとしたのだが、いつものように息を吸い込むことができなくなってきている。 「望っ！」 　和也は望の体を揺らし、そう興奮気味に言うのだが、 「和也が言いたい事は分かってる……。　なら、最後の一秒まで生きたいと思うなら、何も話さずにじっとしている方がいいんじゃねぇのか？　話す方が酸素を沢山取り入れなきゃいけないんだしよ。　最後の最後まで雄介達の事を信じて、今は救助してくれるのを待つしかねぇだろ？」 「そうだな……」 　それを最後に会話は途絶え、望達がいる避難所内には外で作業している音だけが響き渡る。 　やがて大型重機の音が止み、今度は水音が聞こえてきた。 　やっとトンネル内に入る為の土砂を退ける作業までが終わったのであろう。そして今はトンネル内にある火を消している所なのかもしれない。 　だが、それでもなかなか望達がいる避難所まで救助は来ない。 　きっと外では火を消す作業に手間取ってしまっているのであろう。 「そろそろ……俺等も……」 　もう避難所にいる人間は酸素が薄くなってきているせいか、和也の方もそう言葉は漏らしたものの、どうやら最後まで言えなかったようだ。 　その時、ドアの向こうでチェーンソーを使っている音が聞こえてくる。そして少しずつではあるのだが、そのチェーンソーで切った隙間から光が中に入ってきた。 　その光は救助者からしてみたら、完全な希望の光だろう。 　酸素が薄くなってきている中、間もなく望も意識を手放す手前だったのか、薄目である一点を見つめる。 　一瞬、自分は死んでしまったのかと思われたのだが、望の耳に聞き慣れた声が聞こえてきたようで、 「望！　望！　大丈夫かっ！」 　そう言われて望の方は一気に目を開けると、そこには笑顔の雄介がいた。 「……雄介？」 「ああ、お前等の事、助けに来たで……。　ちょい待っててな、和也達の方も軽く意識なくし始めてるみたいやし、反応があるか見てくるな」 　雄介は一旦、望から離れると和也の所へと行き、和也の顔を軽く叩き、和也の名前を呼ぶのだ。 　その頃、望はゆっくりと半身を起こすと、息を体内に吸い込む。　少し安心したような表情でいると、 「望！　怪我人はっ！？」 「ああ、おう！」 　そう雄介に声を掛けられて望はその場に立とうとしたのだが、完全に体中に酸素を取り入れられない体はフラつき、倒れそうになったところを雄介の両腕によって支えられる望。