1232 / 1481
ー崩落ー104
雄介はそうあっさりと歩夢のことを諦め、裕二のことを背負いトンネル内に待機している救急車へと運び、再び望のところへ戻ってきて、
「な、アイツのこと……強制的に外に連れてってええか?」
「……へ?」
最初、望は雄介が言っている意味が分からなかったが、一瞬で雄介が言いたいことを理解し、
「ああ、力づくで連れて行っていいぜ。 お前じゃ、あの歩夢には言葉じゃ勝てないだろうな」
「ほなら、そうさせてもらうわぁ……」
雄介は再び歩夢へ近づくと、
「望から許可得たし、スマンが……お前のことを連れていかせてもらうで」
雄介は歩夢を抱き上げると、そんなことをされた歩夢は雄介の腕の中で暴れ出すが、雄介は怯むことなくそのまま続ける。
「離せよっ!」
「無理やって……」
そう強く言ってくる歩夢に対して、雄介はまだ冷静に静かに答える。そして、歩夢がどんなに雄介の腕の中で暴れても、歩夢はそこから抜け出すことができないでいる。
それで歩夢は諦めたのだろうか。 やっとのことで腕の中で大人しくなったようだ。
それを見ていた和也は、
「やっと、歩夢の奴……大人しくなったみたいだな」
「雄介にでもああでもしてもらわないと、病院に行かなさそうだからな」
望はゆっくりとそこに立ち、もう怪我人は病院に搬送し終わったこともあって、安堵しながらゆっくりと体を伸ばす。
「俺たちも外に出ようぜ」
「ああ、そうだな……」
和也と望は笑顔になり、
「後はお前だけやで……外に行こうや……」
雄介はもう一度トンネル内にある避難所へ戻ってきて、望と和也を誘導して外へと向かう。
崩落があったトンネルの方の火はもちろん消えていたが、消火活動の後だったからなのか、水浸しになっていた。
トンネル内に閉じ込められた車はガソリンが引火し、もう既に骨組みしか残っていない。
そんな中を歩き、雄介が先導して付いて行くと、トンネルの先が赤くなってきているのが見える。
そんな光が懐かしいという表現はおかしいのだが、もう何時間振りなのか、何日振りになるのかは分からないが、やっと暗い場所から明るい場所へ行けた望と和也。
ともだちにシェアしよう!