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ー崩落ー104

 雄介はそうあっさりと歩夢のことを諦め、裕二のことを背負いトンネル内に待機している救急車へと運び、再び望のところへ戻ってきて、 「な、アイツのこと……強制的に外に連れてってええか?」 「……へ?」  最初、望は雄介が言っている意味が分からなかったが、一瞬で雄介が言いたいことを理解し、 「ああ、力づくで連れて行っていいぜ。 お前じゃ、あの歩夢には言葉じゃ勝てないだろうな」 「ほなら、そうさせてもらうわぁ……」  雄介は再び歩夢へ近づくと、 「望から許可得たし、スマンが……お前のことを連れていかせてもらうで」  雄介は歩夢を抱き上げると、そんなことをされた歩夢は雄介の腕の中で暴れ出すが、雄介は怯むことなくそのまま続ける。 「離せよっ!」 「無理やって……」  そう強く言ってくる歩夢に対して、雄介はまだ冷静に静かに答える。そして、歩夢がどんなに雄介の腕の中で暴れても、歩夢はそこから抜け出すことができないでいる。  それで歩夢は諦めたのだろうか。 やっとのことで腕の中で大人しくなったようだ。  それを見ていた和也は、 「やっと、歩夢の奴……大人しくなったみたいだな」 「雄介にでもああでもしてもらわないと、病院に行かなさそうだからな」  望はゆっくりとそこに立ち、もう怪我人は病院に搬送し終わったこともあって、安堵しながらゆっくりと体を伸ばす。 「俺たちも外に出ようぜ」 「ああ、そうだな……」  和也と望は笑顔になり、 「後はお前だけやで……外に行こうや……」  雄介はもう一度トンネル内にある避難所へ戻ってきて、望と和也を誘導して外へと向かう。  崩落があったトンネルの方の火はもちろん消えていたが、消火活動の後だったからなのか、水浸しになっていた。  トンネル内に閉じ込められた車はガソリンが引火し、もう既に骨組みしか残っていない。  そんな中を歩き、雄介が先導して付いて行くと、トンネルの先が赤くなってきているのが見える。  そんな光が懐かしいという表現はおかしいのだが、もう何時間振りなのか、何日振りになるのかは分からないが、やっと暗い場所から明るい場所へ行けた望と和也。

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