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ー崩落ー106
「どんな感じだったんだ? あの事故……」
「知らなーい……」
今の歩夢の言葉に、望は頭に「はてなマーク」を浮かべる。
今さっき歩夢は事故の記事を見ていると言っていたのに、その事故のことに関しては「知らない」と答えている。
「お前さぁ、あの事故の記事を見てるんじゃねぇのか?」
「見てるけど、読んでないだけー!」
さらにわからない言葉が返ってくる。
「なんだよー。見てるだけって……」
「もー! 兄さん、うるさい!」
歩夢は望のことが邪魔みたいな言葉を言うと、望のことを見上げる。
「兄さんに宣戦布告していいかな?」
歩夢はそう言うと悪魔のような笑みを浮かべて、その雑誌を望へと渡す。
「雄兄さんってカッコいいよねー。この前の事故で僕はそう思っちゃった。だから、今は兄さんより雄兄さんの方が好きになっちゃったからさ、今度は雄兄さんにするよ!」
その歩夢の言葉に、望と和也は目を合わせて目をパチクリとさせていた。
そこに口を挟む和也。
「あのなぁ、この前、お前に言っただろうが……。人の物を取ると幸せなことは訪れないってな」
「でも、雄兄さんのこと、僕は兄さんより幸せにする自信あるよ!」
「だから、そういう問題じゃねぇんだよっ!」
こういう事に関してあまり口にしないと分かっている和也は、歩夢と言い合いを続けている。
「人を好きになるのはいいことなんじゃないの?それで、雄兄さんが兄さんより僕のことを選んでくれたら、逆に兄さんへの気持ちはそこまでだったってことなんじゃないの?」
「絶対に雄介はな、お前なんかより望のことを選ぶに決まってるじゃねぇか! つーか、お前さ、雄介を相手にするって事は下の立場になるって事なんだぜ。それでもいいってことなんだよな?」
そう和也はふざけて言ったつもりだったのだが、歩夢はどうやら平気そうで、
「別に僕はその点に関しては構わないんだけどー。兄さんとしてるってことは上手くて気持ち良くさせてくれそうだしね」
その歩夢の言葉に和也はため息を漏らす。
「……って、いうかー……お前は俺たちがシてるって事、知ってんだよー?」
今まで黙っていた望だったが、そこが気になったのか、心なしか顔を赤くしながら聞いてみる。
「それ? それは……前に雄兄さんに聞いたことがあったからね」
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