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ー崩落ー107

「ホント、雄介って人気あるよなぁ? まぁ、特に男にだけどよ……。ま、いいんじゃねーの? お前が雄介のこと好きになってもさ……」  さっきまでは望のフォローをしていた和也だったのだが、急に態度を変え、今度は歩夢の意見に賛成しているようにも思える。 「じゃ、いいんだねぇ。んじゃあ、そうしよー」  そう歩夢は嬉しそうに言うが、それを聞いていた望の心は穏やかではない。  望の性格上、なかなかそれを言い出せるわけもなく、しばらくの間、拳を握っていただけだったが、突然、大声を出し、 「それは絶対にダメだからなっ! 雄介は俺のもんなんだぞ!」  その望の大胆発言に、和也はクスクスと笑い始める。 「やっぱな……望の場合にはこうでも言わないと動かないよな?」  そう独り言を漏らす和也。 「だから! 雄介は絶対にお前には渡さないって言ってんだっ! それに、雄介は絶対に俺しか見てねぇんだからな! 俺以外の奴は絶対に眼中にはないだろうし」  そう興奮気味に言う望に対し、まだ歩夢のほうは余裕があるのか、 「大丈夫だよ……僕は兄さんに似てるんだからさ。それに、僕は兄さんと違って甘え上手だしね。だから、雄兄さんを兄さんから取る自信あるよ」 「お前なぁ! いい加減にしろって!」 「兄さん……ここは病室なんだけどな……そんなに大声出していいの? 兄さんの声、外に聞こえてない?」 「そんな事は別にいいんだよー!」 「いや、それはさすがに望……ヤバいって……」  そう今まで黙っていた和也だったが、やっとのことで望を止めに入る。 「もう行こうぜ。コイツと話してたって話は平行線のままだしさ。それに、望にはすごいいい武器があんじゃねぇか。雄介は望以外の人を絶対に好きになることはないってな。それなら、安心じゃね?」  そう言うと和也は望の背中を支えて、歩夢の病室を出て行く。  そして部屋へと戻ると、 「今日はもう終わりなんだから、掃除して帰ろうぜ」  そう和也は明るく言うが、望のほうはまだ歩夢との言い合いを思い出しているのか、機嫌がものすごく悪そうだ。  そんな望に和也はため息を漏らしながらも、いつものように掃除を始める。  その間、望は自分の仕事があるようで机に向かっているが、いつもとは違うオーラを感じた和也は、掃除を終わらせるとさっさと部屋を出て行くのだった。

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