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ー崩落ー110
暫く考えていた和也だったが、急に慌てた様子で電話の受話器を取ると、院内アナウンスで望のことを呼び出した。
それから暫くすると、望は和也がいるナースステーションに現れ、
「和也! 何があったんだ? お前が俺のことを呼び出すなんて滅多にないからさぁ」
そう焦ったように望は言うと、和也もそんな望に気づいたのか、慌てた様子で望の腕を掴んで、
「なぁ、望! お前と雄介の間で何があったんだよー! 今さ、雄介がスーツ着て歩夢の病室に入ってたんだよ!」
「はぁ!? 何で? 雄介が!?」
今日、雄介が歩夢の病室に来るなんて聞いていなかったことだ。しかし、今の雄介は一体何を考えているのだろうか。
「……って、マジで!? 何でだよ、何で雄介が歩夢の所に行ったんだ?」
「とりあえずさ……」
和也はそんなことを言いながら望の腕を引いて、二人は歩夢の病室の前へ向かう。
すると、病室の中から二人の会話が聞こえるようで、二人は病室のドアに耳を当ててその会話を聞き始める。
「雄兄さん……スーツまで着てきて僕にわざわざ会いに来てくれたんだー! 雄兄さんって体を鍛えているから何を着ても似合うんだね。 話は兄さんから聞いた? 僕ね……雄兄さんのこと好きになっちゃったんだ……。 もう、あの事故の時の雄兄さん、凄くカッコよかったんだよね。 そうそう! 僕にしては珍しく抱いてもらいたいって思っちゃったしね。 僕は普通だったら、僕は雄兄さんと同じ立場の人間なんだけど、雄兄さんには特別っていうのかな?」
そこまで黙って聞いていた雄介だったが、突然口を開き、
「お前が俺に対する気持ちっていうのはそれだけなんやな?」
その雄介の言葉に歩夢は笑顔を向ける。
「これだけじゃあ無いに決まってるじゃん! だけど、今はこれだけかな? だから、雄兄さんのこともっともっと知りたいしー。 もし、雄兄さんと付き合えたら……もっともっと雄兄さんのいい所見つけられると思うんだけどなぁ」
「付き合うって? 俺と恋人同士になるってことやろ? しかしなぁ、お前とは十以上も離れておって話とかも合わへんのかもしれへんで……」
「別にそこは気にしないでしょー」
「俺の仕事上、あんま会われへんかもしれへんのやで……」
「それは仕方ないことだしー、僕は女性じゃないんだから、そこのところは初々しくないしね。 そんなこと、平気に決まってるじゃん!」
雄介はその歩夢の言葉に少し考えて、
「ほな、分かった……」
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