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ー崩落ー111
そう言うと、逆に雄介は笑顔になって、
「悪いがな……俺はどんなに都合のええ人間が目の前に現れたとしても、望への気持ちはずっとこれからも変わらへん。ホンマ、俺からしてみたら望っていう人間は一目惚れで運命の奴やって思うたからや。どんな望であっても、どんなに性格が悪い望でも、俺が望の事を飽きるっていうまで、望の事は離さへんつもりや……そんだけ、俺は望に惚れておるしな。前に望が記憶喪失になった時、一度、俺は望から逃げてもうた事あんねんけど……けど! ホンマに俺は望の事が好きなんやって!せやから、そこから、どんな望でも俺は逃げへんって決めたんやからな」
雄介が歩夢に向かって、望の事を本気で好きだっていう事をアピールしている時、和也と望に近付いて来る人物がいる。
「ちょっとー! 仕事中なのに何をしているんですか!? 病室に向けて耳まで付けて! 望さんもそんな人だとは思いませんでしたよー」
「お! やっと来たか……裕実! とりあえずさぁ、交代宜しくー!」
そう和也は裕実の肩を軽く叩くのだ。
「ちょ、和也!? 答えになってないんですけどー」
その和也の言葉に瞳を座らせ、和也の事を見上げる。
「あ、悪い……。ま、まぁ……ここの病室にいる患者さんは誰だ?」
和也は壁に掲げてある名札を指差す。
裕実は和也が指した方に視線を向けると、
「望さんの弟さんですか? それで?」
そう言う裕実は反応が薄いようだ。
「それで、その弟が望の事を好きになったんじゃなくて、今度は雄介の事が好きになったんだと。んで、今はその雄介がな……スーツをバッチリ着て来たって所なんだけどな」
「……へ? それって、どういう事です?」
「ほらな、裕実だってそこは意味分からないだろ? 望の弟が直接的ではないんだけどさ、望が雄介に歩夢が雄介の事が好きだっていうのを伝えたらしいんだよ。それで、今日は何でかその雄介はスーツで歩夢の所に来たらしいんだよな。ま、これはどういう意味っていうのがまだ分からない所なんだけどさ」
「そりゃ、そうですよね」
「だから、俺達はここに来て、二人の会話を聞きに来たって訳だ。でもな、雄介はちゃんと歩夢に断ろうとしてるみたいなんだよな」
そこまで真面目に言っていた和也だったのだが、直ぐにスイッチを入れ替えて、
「……ってな訳で、裕実、交代宜しくー! まぁ、どっちにしろ交代の時間だけどな」
「確かにそうなんですけどー」
裕実はため息を吐くと、仕方なさそうにその場を去って行く。
そして再び、歩夢と雄介が話をしている病室の方へと耳を傾ける。
「……どんな望でも俺は望の事守って行こうと思ってる……ホンマにどないに甘え上手な奴が俺の前に現れても、俺は望以外は眼中にはないっていう事や!」
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