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ー崩落ー112

 歩夢はその雄介の言葉を聞いて諦めたのか、まだ策があるのか分からないのだが、ベッドへと寄り掛かり、 「雄兄さんは、そんなに兄さんに惚れ込んでるんだねー。僕と兄さんの違いって何? 顔なんかそっくりじゃない?」 「お前と望じゃあな、性格なんかは全くもって違う! 望はな……確かに普段は素っ気無い感じなんやけど、ホンマに今は俺の事が好きやって事が伝わって来るんや。せやけど、お前の方は確かに甘え上手なのかもしれへんけど、本当に俺の事が好きやっていうのは伝わってこぇへんのや……そこやで、望とお前が違うっていう所はな。それに言葉っていうのは簡単なもんで、『好き』って言葉はホンマ誰にでも言える事やけど、好きだって事を伝えるのは結構難しいと思うんやけどな。まぁ、そこもお前と望の違いなんかな?」 「……って、事は雄兄さんは、僕が雄兄さんの事好きだって事を信じてないって事?」 「当たり前やんか……今までお前の行いを見ておったら一目瞭然に決まってるやろ? 初めは望で次は裕実……んで、今は俺って事ねんやろ? 俺の事好きって事を俺が信じられると思うか? 普通に考えて無理に決まってるやろが……」 「ならさぁ、僕が本当に雄兄さんの事が好きだって事を証明する事が出来ればいいんだよね?」 「あんな……別に、そういう意味で言っておる訳やないんやからな……」  何を言ってもなかなか納得してくれない歩夢に、流石の雄介もため息を漏らす。 「じゃあ、僕が雄兄さんの事を僕の方に振り向かせればいいって事!?」  雄介が言ってる意味が本当に分かってないのか、スッキリしたような表情で雄介の方に笑顔を向ける歩夢。  そんな歩夢に、雄介の方は頭を悩ませ暫く考えると、 「分かった……。お前がホンマに俺の事を好きやって言うなら、俺をお前の方に振り向かせる事が出来たら……お前の言う事を聞いたる」 「本当!?」  その雄介の言葉に歩夢は目を見開き、雄介の事を見上げる。 「ああ、ホンマや……。言うとくが、俺がお前に向かって好きやって言った時だけやからな」 「分かってるって!」  どうやら二人の間で交換条件みたいなのが成立したようだ。そこに雄介は再びため息を漏らす。 「ほな、それでええな?」  雄介は念を押すかのように言うと病室を出て行こうとしたのだが、急に歩夢に腕を掴まれてしまうのだ。そして、そのまま歩夢の方に雄介は引っ張られてしまい、歩夢はそのまま雄介の唇に唇を重ねる。  一瞬、何が起きたのか? っていうのが分からなかった雄介なのだが、直ぐに歩夢に何をされたのかを把握したようで、歩夢から離れるのだ。 「これで、雄兄さんは、僕のものって事だよね?」

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