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ー崩落ー113

「ちょー! はぁー!? え? あー、ちょー、何考えてんねん! たかがキスした位で俺はお前のもんにはならへんからな!」 「そ……でも、普通は男同士じゃあキスはしないよねー?」  その雄介と歩夢の会話を聞いていた望は、そんな二人の様子に体をビクリとさせる。 「悪ぃ……俺、もういいや……」  望は和也にそう告げると、切なそうな表情をしながら歩夢の病室から去って行ってしまう。 「……へ? あ、ちょ、ちょっと待てよ!」  和也は望のことを追いかけようとしたが、今の望の心情を考えると一人にさせておいた方がいいかと思い、ひとまず最後まで二人の会話を聞くことにしたようだ。  和也は再びドアに耳を付ける。 「今のは、お前が勝手に俺にしただけで、俺がお前の方に振り向いたって事にはならへんやろ!」 「そんなに強く言わなくてもいいじゃない? ……ってさ、雄兄さん……もしかして、本当は僕の事好きなんじゃないんじゃないの? それに、キスだけで相当嫌がってるしねー。 もしかして、雄兄さんって優しいから、僕とそういう話を誤魔化すように、どちらも傷付かない方法を取っただけなんじゃないの?」 「はぁ!? なんやねんそれ?」  雄介は歩夢が言っている意味が分からないのか、素でそう返す。 「……へ? 雄兄さんまさかそこまで本当に考えて無かったって事!?」 「そないな事、全く俺の方は考えてへんで……」 「そうか……雄兄さんって、何も考えてないんだー」 「……って、考えるってなんやねん。 俺は望の事しか考えてへんしな」  歩夢はクスリと笑うと、 「兄さんが雄兄さんの事好きな理由が分かった気がする。 ま、そこは僕もなんだけどさ……。 ホント、雄兄さんって何も考えてないんだねー。 普通さ、何か考えて話するもんじゃないんじゃないの? ま、梅沢さんはすぐに考えて言葉にしてるみたいだけどね。 それに、相手の心とか読んでその先の事も考えてるみたいだしさぁ」  今、歩夢が言っていることは、雄介には意味が分からないようだ。 「……って、ホンマ何言うてるん? ま、ええわぁ……そういう事やからな……」  雄介はそれだけを歩夢に伝えると、歩夢の病室を出て行く。  すると、歩夢の病室前で和也の姿を見掛ける雄介。 「……って、何でここに和也が居るん!?」 「よっ!」  そう言って、和也は雄介に向かい笑顔を見せる。 「とりあえずさぁ、雄介。 俺等の部屋の方に行かないか?」 「あ、お、おう……」  雄介はそう和也に言われて、望と和也の部屋へと向かうのだ。

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