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ー崩落ー114
和也は部屋のドアを開けると、先に雄介を部屋の中に入れ、自分は後から入り、机でまだ仕事をしている望に声を掛ける。
「望……雄介とお前の弟の話、終わったみたいだから、雄介の事連れて来たぜ」
その和也の言葉に、望は反応したが、和也の方へと振り向かずに机にあるパソコンに視線を向けていた。
「今日は俺がいるんだから、ちゃんと雄介と話しろよ。 望だってさっきの雄介の行動が気になってるんだろ? ほら、今日、雄介がお前の弟の所にスーツで来てたって事がさ……」
和也はそこまで言うと、今度は雄介の方に体を向けて、
「とりあえずさぁ、俺はお前が望の弟がいる病室に入って行くのを見ていて、それから望の弟の病室の前で全部話を聞いてたんだよな? ……で、お前はそのスーツの意味はどういう事なんだ?」
「ああ、これか? なるほどなぁ、こんな格好をして望の弟の所に行っておったから、望は誤解しておるって事やんな。 そりゃ、望の弟の事、しっかり決着つけて、ホンマは望とデートしに行くつもりで来たんやけど、望の弟とはちゃんと決着付けられへんかったなぁ。 ん、まぁ……ちゃんと決着する事も出来へんかったし、今はまだ望の目見て、堂々と『望にデート行こっ!』って言えんようになってしもうたって事なんやけどな」
「そういう事か……。 ってか、俺は最後まで話を聞いてたんだけどさ。 雄介は何で望の弟との話で決着付けられなかったんだ?」
「それは、アイツと話しておっても、話は平行線のままやったからな……仕方無しに俺の方が折れて、アイツとは約束はしてもうた事があんねんけど。 『もし、アイツが俺の事振り向かせる事が出来たら言う事は聞く』ってな。 確かに俺はアイツとそういう約束はした。 だけど、俺の方は絶対に望以外に今はもう振り向く事はせぇへんから、逆にそういう約束をしたんやって……。 ある意味、これが一番いい方法やと思わへん? あのままじゃあ、アイツとは話終わる気配なかったしな……それに、逆に言えば、それが俺からしてみたら絶対に望以外の人には振り向かないっていう決心みたいなもんやし」
和也は雄介のその言葉を聞いて、望の方に視線を向け、
「望……雄介の方はそういう事なんだってさ……だから、そろそろ機嫌の方直したらどうだ? 今言ってた雄介の意味が分かっただろ? 今まで望が機嫌悪かったのは雄介と歩夢のせいなんだし、それに、雄介の方はそういう意味で今日は歩夢の所に行ったっていう意味なんだからさ」
すると望は急に音を立てて立ち上がり、和也の腕を引っ張ると部屋の外に連れて行く。
「お前さぁ、俺の性格知ってんだろ? そりゃ、流石に俺だって雄介が言ってる意味は分かるんだけどなぁ」
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