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ー過去ー2

「お前っていう奴はホントっ! 遠慮っていうことを知らねぇ奴だよなっ! 朝から、そんなに俺のこと怒らせて楽しいのか!」  望は机を両手で叩き、立ち上がると和也のことを睨み付ける。  だが望のことを怒らせてしまっているのに、涼しい顔をしているのは和也だ。 「ホント、俺はお前のことを心配して言ってんだよ。逆に望は俺の性格分かってくれてねぇよなぁ?」  和也は軽く息を吐くと、 「お前の性格だとな……雄介とヤったっていうのも言わねぇし、おまけにそのせいで腰が痛いなんてこと自ら言わねぇだろ? だから、俺の方は望に怒られる覚悟で望の口から言ってもらえるようにしている訳だ」  確かに和也が言ってることは正しい。望の方は和也のその言葉に何も言えなくなったのか、黙ったまま椅子へと腰を落とす。 「腰が痛いんだったら、俺が仕事行く前に鎮痛剤を処方してもらってきてやるよ。腰が痛いままじゃあ、仕事に身が入らないだろ?」  そう言うと和也は更衣室へと消えて行く。  それを見送った望は息を吐き、それと同時に悔しさで顔を歪ませていた。  本当に和也という人間というのはぐうの音も出ない位の言葉がこうもよく出てくるもんだ。全くもって今の和也の言葉には望の方は返す言葉も無くなってしまったのだから。それにその言葉によって自分が言いたいことを引き出してくれるのだからスッキリしているのは確かだ。  こんなにも和也といるのに、和也の方が望のことをよく分かっているのかもしれない。だが望の方は全く和也のことを分かってないのだから、本当にその差が悔しい所だろう。  和也の方は着替えを終えると、部屋を出て望のために薬を取りに薬局の方へと向かう。  その途中、廊下でいきなり声を掛けられる和也。 「あの……スイマセン……。院長室っていうのは何処ですか? 僕、今日からここで働くことになったのですが、まだ、この病院のこと分からなくて……」  そう和也の方は尋ねられて急いでいた足を止めると、顔を上げる。するとその人物を見た瞬間、和也の表情がみるみるうちに変わるのだ。そして声にもならないような声を上げる。  やっと声を出せたかと思うと、あまりにものショックで、 「あ、あー!」  未だにそれしか声にならないようで、目を丸くしながらその人物を見つめてしまっていた。 「あ、和也。って、和也と会うの本当に久しぶりだよな! まぁ、とりあえず元気そうで良かったよ。ってかさ、僕の方は今日からここで働けるようになったんだけど」 「働くって……はぁあ!? お前がここで!?」 「うん! そうだよ。本当は専門学校出て和也とは別れたくはなかったんだけど……まぁ、そこは仕方なく他の病院にしたっていうのか……僕の方もこの病院に面接したんだけど就職できなくて、他の病院で就職が決まったから仕方なくそっちにしたんだけど、今回! なんと! この病院で働けるようになったって訳なんだよね」

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