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ー過去ー7
「まぁ、そうなんだけどさ……」
和也は望の言葉に納得がいかない感じなのだが、仕方なさそうに答えた後、
「吉良先生! 部屋の掃除終わりました!」
元気のない和也に対し、実琴の方は元気がいいらしい。
実琴からしてみたら、久しぶりに恋人に会えたのだから、内心ではかなり嬉しいのであろう。
「あ、ああ……ありがとうな……」
そう何故か望の方も顔を強張らせながら答える。
「あの……」
「何だ?」
仕事が終わった後に、実琴は真剣な表情をして望と和也のことを見上げ、
「仕事の方も終わったことですし、和也と帰ってもいいですか?」
その実琴の言葉に二人は体を固まらせたようだ。その一瞬、実琴の言葉に体を固まらせた和也と望だったのだが、
「あのさ……それを聞くなら和也に聞いてみてくれねぇか?」
そんな望の言葉に、和也の方は望のことを見上げる。
そんな和也に、望はフォローをするどころか、そこはもう和也の責任なのだから自分で何とかしろっていう事を言いたいのかもしれない。
「あのですね……さっきから、お二人のオーラが和也と僕とで一緒に帰るのをダメって言ってるんですよね。だから、そのことについて聞いてみたんですよ。って、まさかとは思うのですが、吉良先生と和也が付き合ってるって訳じゃあないですよね?」
その実琴の質問は的を得てはいないのだが、近からず遠からずというところだろうか。
「まさか……それはねぇな……」
「なら、いいんですけど……ただ、そんな気がしたのでね」
そこで一旦、実琴は言葉を切ったものの、元の話へと戻したのか、
「で、和也どうなの? こうしてまた会えたのだから、デートとかして……ホテルとか行かない?」
そうストレートに言う実琴に、望の方は顔を真っ赤にしてしまう。
実琴の性格は望とも裕実とも異なる性格を持っているようだ。
今まで黙っていた和也だったのだが、いきなり立ち上がって、
「ゴメン……」
和也は実琴に向かって頭を下げると、
「分かったよ……もう、本当のことを実琴に言うことにするよ。そうだよな、今は実琴とは仕事仲間だしさ、なんか言っておかないとこのままここで仕事ができないような気がするし。ハッキリ言った方がいいだろうと思ったからよ」
和也はいきなり立ち上がったかと思うと、真剣な瞳で実琴のことを見つめる。そんな和也に、実琴の方は軽く息を吐き、
「やっぱ、そうだったんだ……和也にはもう僕じゃない恋人がいるってことでしょう? 僕って、いつもそうなんだ。 そして、僕はいつも一人ぼっちなんだよね」
そう切なそうに言う実琴に、和也は望の方をチラリと見上げ、
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