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ー過去ー20
最初は真面目に語っていた和也だったが、最後の方はいたずらっ子のような笑みを浮かべ、裕実に話を振った。
「そうですよー。望さん……まさか、話を逸らしたって訳じゃないですよね? 別に僕は無理矢理って訳ではないですから、話したくなかったら話さなくてもいいんですけどね」
そう言ってくる裕実だが、その言い方から、話さなければならないような雰囲気を感じさせられるのは気のせいだろうか。言葉には強制力がないはずなのに、何となく「話して下さい」とオーラで言われているように思える。
望は仕方なく軽く息を吐き、まずは大学時代に女性と付き合っていた頃の話を始め、終えると、裕実は言った。
「確かに、女性から『下手』なんて言われたらトラウマになりますよねー。きっと、和也には分からないところなのかもしれませんけどね。僕は全く女性と付き合ったことがないんですが、もし、望さんと同じように僕も女性に『下手』って言われそうな気がしますよ。あ、和也と付き合う前までは……その……一人で、そういうことをするのもしたことがなかったですからね」
「あのなぁ、男っていうのは、そういうDVDとかを見て勉強するもんなんだよ。望と裕実ってのは、逆にそういったDVDを見てこなかったから女性に『下手』って言われちまうんじゃねぇのか?確かに本能ってのはあるのかもしれねぇけど、基本を知ってるか知らないかで大分違うと思うんだけどなぁ」
「確かに和也の言う通り、俺はそういったDVDは見てなかったからかもしれねぇな……。だけど、俺の場合、大学の頃は勉強ばっかりしていて、そういったDVDを見る暇なんてなかったし、お前みたいにレンタル屋で簡単に借りられるような性格でもなかったからな」
「今なんかは別に借りに行かなくてもネットで見れるじゃねぇか……それでも見ることはできるんだぜ」
「当時はそこまでして見ようとも思わなかったからな。だから、見てねぇんだよ」
「……んで、ぶっつけ本番!?そりゃ、流石に無理があんだろうよ。もしかしたら、今みたいに知識がついていれば、裕実も望も女性と付き合うことができるんじゃねぇのか?」
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