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ー過去ー21
「あ、でもさ……今は……その……雄介がいるから……女性の恋人は要らないっていうのか……」
望はそう答えたのだが、逆に裕実は、
「和也がそう言うんなら、僕はそうしますよ」
裕実がそう言うと、和也は裕実に抱き付き、
「あー、それは悪かったー。やっぱり、そうしちゃダメだよな。俺は裕実とは別れたくはねぇしよ」
そう言う和也の合間から、裕実は望の方に顔を出し、笑顔でピースサインを送るのだった。
その裕実からのサインに、望は微笑んだ。
きっと今の裕実の言葉は、裕実にとって計算済みだったのだろう。
「……望さん。雄介さんとは?」
「ああ、それか……。それは、雄介が初めて怪我して入院してきた時に俺に一目惚れして、二日か三日後だったかな? 雄介が俺に告白してきたんだよ。俺の方は男性から告白されるのは初めてだったから、いきなり『はい』って答えられなかったし、『暫く考えさせてくれ』って言ったんだよな。で、雄介は俺にだけ告白したつもりだったんだけど、何でかその時、和也は隠れて聞いていたって訳だ。で、その時の俺は和也が俺の事好きだっていうのを知らなかったから、和也に雄介から告白されたことを相談しちまったんだけどさ……なんつーか、その後の和也ってのは、雄介と俺の間を邪魔してきたんだよな。そうこうしているうちに、雄介の方は退院しちまったしよ。でも、その後も大変だったよな……雄介がさ、ある人に命を狙われることがあって、その後も何度も雄介は入退院を繰り返したんだよな。……で、雄介の事件も解決して、和也の方もだいぶ落ち着いてきてから、俺の方もやっと雄介に告白の返事ができて、やっとそこで付き合うことになったって訳だ」
「そうだったんですかー。やっぱり、雄介さんも優しい方だったんですね。どれくらい望さんからの返事を待っていたかは知りませんけど、望さんからの返事を待っていて下さったんですからね」
「まぁ、雄介から告白を受けた後、和也が焦ったように俺に告白してきたんだけどな……」
「だから、それは……ちゃんと反省したって言っただろ? 何回もそこを掘り起こすなよー」
望はひと息吐くと、
「ま、いーや……明日からは本宮さんの恋のキューピットやるんだろ? まず、新城とくっつけさせるのか? 歩夢とくっつけさせるのか?」
「そうだなぁ?」
と和也は腕を組んで考え始めたようだ。
「とりあえず、まずは新城からかな? 同じ病院にいるし、実琴が新城と会う率も高い訳だしな。望の弟の場合には今は雄介に気が向いてるみたいだから、ちょっと無理かもしれねぇしな……それだったら、新城の方が確率が高いんだし、それで、いいんじゃねぇのかな? それで、実琴が仕事できる奴なら新城とコンビ組ませれば安心も出来るじゃねぇか……。新城と裕実が離れられるだろうしな。あ、望が協力してくれるなら指導期間だけでも俺と裕実を交換してもらってもいいぜ」
「それは、お前自ら新城のところに行くってことか?」
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