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ー過去ー23
和也がお風呂に行ったのを確認すると、望は急に笑い始める。
そんな望の様子に裕実が気付かない訳がなかろう。
「急にどうしたんですか?」
「あ、いや……和也って、裕実に弱いのか? 恋人に弱いのか? っていうのは分からないんだけどさ……裕実には押されっぱなしだなって思ってな。そんな和也が可愛いっていうのか、笑えるっていうのがさ……」
裕実はその望の言葉に微笑むと、
「きっと、和也は僕に弱いんだと思いますよ。弱いっていうのか、僕には優しいだけですから……」
裕実は最後の方を強調しながら言い、望に視線を向けて笑顔を見せる。
「そうだな……。アイツが好かれる理由がやっと分かったような気がするよ。ほら、俺はさ、アイツの側にいすぎたからかもしれねぇけど。本当に全くもってアイツのそういう所、気付いてなかったっていうのかな?」
「僕は和也の側にずっといますが、和也が優しいのはひしひしと感じてますよ」
「そうだな。きっとアイツは『恋人』と『友達』の扱い方が違うのかもな……」
二人で和也の話をしていると、どうやら和也が風呂から上がってきたようで、
「上がったぜー」
「ああ、じゃあ……次は……」
と望が言おうとした瞬間、和也の今の姿が望の視界に入ってきてしまったのか、
「お前なー、なんで体にタオルを巻くとか、パジャマを着るとか、せめて下着を履いてくるとかっていうのが出来ないのかな?」
「タオルは頭に巻いてるし、あー! 下着! 普通に忘れてたぜ」
そうふざけた笑いをしながら、和也は再び脱衣所に向かい、すぐに戻ってくる。
「でもさー、二人共、俺の裸見た事あるんだから、別にいいじゃねぇか」
「別に良くねぇよ。まったく、そういうとこお前は本当にガキだよな……」
そして望は裕実の方に視線を向けると、
「次、裕実が入って来ていいぜ」
「分かりました。望さんには悪いですが、先にお風呂貸していただきますね」
裕実はそう言うとお風呂場へと向かい、それと入れ替わりに和也が望の前に腰を下ろす。
さっきまでふざけていた和也だったが、今度は真剣な表情で望の事を見つめると、
「なぁ、望……」
「なんだよ……いきなり、真面目そうな表情してさ」
なんでか和也に対して警戒心を露わにしている望なのだが、それに気付いた和也は、
「あ、いや……そういう事じゃなくてー、裕実の事なんだけどさ……」
「……へ?」
裕実という言葉に、望は急に和也の方に視線を向け、
「……で、裕実の事で何があるんだ? まさか、やっぱり、和也は本宮君とよりを戻したいとか言うんじゃないだろうな?」
その望の言葉に、和也は顔を俯けると、
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