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ー過去ー26
「例えば、お前等が兄弟だったとして、実琴は小さい頃から施設に居たって言ってて、お前は家で育てられたんだろ? その違いってなんだろうな? って……」
「そこも、分かりませんよ」
「確かにそうだよな」
和也はその質問で、どうにか裕実の過去について探ろうとしたのだが、珍しく失敗したようだ。それほど裕実の口が硬いという事なのかもしれない。
本当に裕実は自分の過去についてなかなか口を開いてくれなさそうだ。
話が一旦切れたところでちょうど望も出てきたようで、
「そろそろ寝ないとな?」
「そうだな……。とりあえず、俺の方は客間の方で寝るよ……だからさ、今日は二人で寝てくれないか?」
その和也の言葉に目を丸くする裕実と望。
「どういう風の吹き回しだ?」
「いや……先手必勝ってやつだ。どうせ、今の裕実に一緒に寝ようって言っても、さっき、お風呂の時と同じように『望さんが可哀そう』って言われそうだったからな、だから、先に言っておいたまでだ」
その和也の言葉に望は吹き出す。
「確かに、そうなのかもしれねぇな。分かった……。和也がそう言ってる事だし、今日は裕実と一緒に寝ようかな?」
「そうですね」
裕実の方もそう答えると、三人はそれぞれ二階の部屋へと向かうのだ。
そして和也の方は客間へと向かい、望と裕実の方はいつも望が寝ている部屋へと向かう。
「何か変ですよねー? 僕と望さんが一緒に寝るなんて……」
「ま、いいんじゃねぇ? たまには自分の体をちゃんと休ませてやらないとだしな……毎日のように休まんないんじゃ体保たなくなっちまうぞ……」
「まぁ、確かにそうなんですけどー。和也はですね……本当にそういう時は優しくて僕の体の負担にならないようにしてくれますから」
「それは、雄介の方もそうだしな。ま、ついこの間はちょっと俺が暴走しちまったけどさ」
「望さんでも暴走してしまう時あるんですね」
「みたいだな。まさか、自分がここまで雄介にハマっちまってるとは思ってもみなかった事だけどな。雄介があんなにいい奴だなんて、付き合ってみなきゃ分からなかった事だけど」
「確かに、付き合ってみないと人の良さなんて分かりませんもんね。僕も和也と付き合ってみて今は良かったとさえ思っていますから」
「んー、俺にはそこの所は分からないけどな。いい奴だっていうのは分かってはいるんだけど……まぁ、そこはあくまで友達としてしか見てなかったからかな?」
「きっと、そうですよ! 僕からそう言うのは変ですけどね。望さんと和也は友達同士っていうのがベストなんだと思いますよ。それ以上の事を望んでしまいますと、そのいい関係が崩れてしまうような気がしますしね」
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