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ー過去ー28

「やっぱり、和也は優しいですね。でも、さっき一瞬拗ねたじゃないですかぁ!」 「まぁ、確かに……でも、一瞬だけだからよ」 「そうでしたか。望さんがですね、気を使って下さったんですよ。少しだけでもいいから和也の所に行ってキスして来いってね」 「へぇー、あの望がね……。なら、望の言葉に甘えようぜ」  和也はそう言うと、後ろから抱きしめてきている裕実の方へと視線を向け、裕実の方も和也に合わせ唇を重ねる。 「よしっ! やる気出た!」  その和也の言葉に裕実はクスリとし、 「やっぱり、和也っていうのは単純っていうのか分かりやすい性格ですよね」 「そりゃ、そうだろうが……ってか、性格ってかさ、恋人に朝からキスしてもらったら元気出るに決まってるじゃんか!」 「確かにそうですけどね」  裕実がそれを言った直後、部屋にはいい匂いが漂ってくる。 「あまり、望さんの事待たせてしまっては可哀そうですから、そろそろ和也行きましょうか?」 「そうだな……」  そう言うと和也は立ち上がり、二人は一緒に下へと降りて行く。 「望が飯作るなんて珍しいよな」 「まぁ、大したもんじゃねぇけどな。目玉焼きとパンだしよ。こんなの作ったうちに入らないだろ?」 「それでも、珍しいって言ってんの。初めてなんじゃねぇ? 俺が望が作ってくれた飯を食べるのはさ」 「そうだったか?」  何でか分からないのだが、どうやら今日の望は機嫌がいいらしく、和也達に料理を作っていた。 「まぁ、こんなに望の機嫌がいいって事はさ、今日仕事終えたら雄介に会えるからなんだろうけどな」 「何か和也言ったかな? 和也は俺が作った飯食わなくてもいいんだぜ……」 「……って、俺、何も悪い事言ってねぇじゃねぇかよ。ただ望が機嫌がいいっていう理由を言っただけだろ? それだけで、朝飯抜きっていうのはねぇだろうが……」 「和也は余計な事を言うから望さんの地雷を踏んでしまうんですよー。口は災いの元っていう位ですからね」 「ま、そういう事だな。お前は余計な事を言い過ぎなんだよ。今度っから言わないと約束したら食べさせてやるよ」  和也は仕方無しにため息を吐くと観念したかのように、 「分かった……もう、余計な事は言わないからさー」

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