1295 / 1476

ー過去ー29

「よく出来ました」  そう望はまるで子供を扱うような口調で言いながら、和也の前に料理を置いた。 「いただきます」  和也は胸の前で手を合わせて、望が作ったご飯を食べ始める。 「マジで美味いんですけどー」 「料理にも入らない物で褒められても嬉しくはねぇけどな」 「いや、マジに……そう望的には料理ではねぇって言うけど、何気に目玉焼きって難しいんだぜ。なんつーの? 白身がとろりとした感じで、黄身も半熟っていうのはさ……例え弱火でやっても、白身の端っこが焦げちゃうもんだろ?」 「あー! 確かに和也が作る目玉焼きっていうのは、そうなりますよね」 「だよなぁ。望、それってどうやるんだ?」 「別に言う程じゃねぇよ……。ただ水を入れるだけだしな」 「水を入れるだけー!?」 「ああ、要は餃子とかと一緒っていうのかな?」 「蒸すって感じなのか?」 「そういう事だな……」 「なる程なぁ」 「まぁ、そこは雄介に教わったんだけどよ」 「ホント、雄介って料理上手いんだな」 「独り暮らしの時に覚えたって言ってたな」 「そうだったんだ。何か俺が作る料理っていうのがダメって感じがしてきたなぁ」 「そんな事ないですよー。十分美味しいですからね!」 「ま、そこは裕実に言ってもらえれば十分かな?」  望はご飯を終えると、食器を流しへと置き、 「早くしねぇと遅刻するぞ」 「ああ、そうだったな」  和也は一気に食べ物を口の中に入れると、 「望……食器はここに置いておいたらいいのか?」 「ああ。多分、すれ違いで帰って来た雄介がやってくれると思うしな」 「そっか……」  和也はそう頷くと、上着を着て出掛ける準備を始める。 「ご馳走さまでしたー」  裕実もそう言って、和也と同じように食器を流しへと置き、 「じゃあ、行くか」 「そうだな」  望は鞄を手にすると玄関の方へと向かう。  和也達も望の後について玄関へ向かい、靴を履くと外に出る。  望は二人が外に出たのを確認してからドアの鍵を閉める。  それから自分の車へと乗り込み、和也達を乗せて病院へと向かった。 「今日は仕事以外でもやる事はいっぱいあるよな?」 「そうだな。忘れないようにしねぇっとな」 「ま、重要っていう訳じゃねぇし、忘れても平気なんじゃねぇかな?」 「ま、そうだけど……。本宮君と裕実の方は気になるけどな……で、もし、裕実と本宮君が兄弟だったら奇跡なんじゃねぇのか?」 「確かに、そうだけどさぁ」

ともだちにシェアしよう!