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ー過去ー29
「よく出来ました」
そう望はまるで子供を扱うような口調で言いながら、和也の前に料理を置いた。
「いただきます」
和也は胸の前で手を合わせて、望が作ったご飯を食べ始める。
「マジで美味いんですけどー」
「料理にも入らない物で褒められても嬉しくはねぇけどな」
「いや、マジに……そう望的には料理ではねぇって言うけど、何気に目玉焼きって難しいんだぜ。なんつーの? 白身がとろりとした感じで、黄身も半熟っていうのはさ……例え弱火でやっても、白身の端っこが焦げちゃうもんだろ?」
「あー! 確かに和也が作る目玉焼きっていうのは、そうなりますよね」
「だよなぁ。望、それってどうやるんだ?」
「別に言う程じゃねぇよ……。ただ水を入れるだけだしな」
「水を入れるだけー!?」
「ああ、要は餃子とかと一緒っていうのかな?」
「蒸すって感じなのか?」
「そういう事だな……」
「なる程なぁ」
「まぁ、そこは雄介に教わったんだけどよ」
「ホント、雄介って料理上手いんだな」
「独り暮らしの時に覚えたって言ってたな」
「そうだったんだ。何か俺が作る料理っていうのがダメって感じがしてきたなぁ」
「そんな事ないですよー。十分美味しいですからね!」
「ま、そこは裕実に言ってもらえれば十分かな?」
望はご飯を終えると、食器を流しへと置き、
「早くしねぇと遅刻するぞ」
「ああ、そうだったな」
和也は一気に食べ物を口の中に入れると、
「望……食器はここに置いておいたらいいのか?」
「ああ。多分、すれ違いで帰って来た雄介がやってくれると思うしな」
「そっか……」
和也はそう頷くと、上着を着て出掛ける準備を始める。
「ご馳走さまでしたー」
裕実もそう言って、和也と同じように食器を流しへと置き、
「じゃあ、行くか」
「そうだな」
望は鞄を手にすると玄関の方へと向かう。
和也達も望の後について玄関へ向かい、靴を履くと外に出る。
望は二人が外に出たのを確認してからドアの鍵を閉める。
それから自分の車へと乗り込み、和也達を乗せて病院へと向かった。
「今日は仕事以外でもやる事はいっぱいあるよな?」
「そうだな。忘れないようにしねぇっとな」
「ま、重要っていう訳じゃねぇし、忘れても平気なんじゃねぇかな?」
「ま、そうだけど……。本宮君と裕実の方は気になるけどな……で、もし、裕実と本宮君が兄弟だったら奇跡なんじゃねぇのか?」
「確かに、そうだけどさぁ」
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