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ー過去ー31

「……へ?」  唐突にそんなことを振られ、素っ頓狂な声を上げない者はいないだろう。 「ちょ、まさか……親父……それって、裕実と本宮実琴君が兄弟っていう話じゃねぇよな?」 「その、まさか!? だとしたら……? 望は興味あるのかな?」 「ま、その……そうだな。寧ろ、今一番興味あることだからな」 「そっか……望は興味ある訳だ」 「……ってかさ、もったいぶらないで教えてくれよ」 「……って、そこまで私がヒントを与えたのだから分かると思うのだけど……」  その裕二の言葉に、再び望は目を見開き、 「そうか? やっぱり、裕実と本宮君は兄弟っていうことか! でもさ、なんでそれを親父は知ってんだ?」 「まぁ、そりゃね……私は一応ここの院長だよ。就職する時には色々と書類を出してもらうだろ? だから、その時に二人の書類には目を通してはいるからね。で、二人共、本籍は一緒だからさ……」 「あー!」  やっと望は裕二が言ってることが分かったのであろう、再び大きな声を上げるのだった。 「あー、そういうことなんだな。俺は二人に遺伝子検査までお願いしてもらうところだったぜ。そうか、本籍かー! 確かにそれは一緒だったら百パーセント兄弟ってことだもんなー。 でもさ、親父、まだ、あの二人の関係で気になることがあるんだけどさ……」 「あのさ、本宮実琴君の方は施設で育ったんだろ? だけど、本宮裕実君の方は家で育てられていたっていうのは聞いてんだけどさ」 「そこまでは私には分かってないことなんだけど」 「そっか……流石にそこまでは分かってないってことか」  望は裕実と実琴の関係を裕二から聞き、スッキリとしたような表情をすると、裕二の病室を出て行く。  そして自分の部屋へと向かうと、そこにはもう和也の姿はなく、裕実が部屋へと来ていた。 「なんだ、もう帰ってたんだな」 「望さんが院長に話しに行ってくれた時点で大丈夫なのは分かっていましたからね」 「まぁ、確かにそうなんだけどな……」  望は自分の鞄を机の上へと置くと、着替えにロッカールームへと消えていく。  望はさっき裕二に聞いた話を裕実に話すべきか悩んでいた。  とりあえず二人の関係が分かったことを和也にも教えてあげたかったのだが、実琴を指導する期間が終わるまでは和也が望の部屋に来ることはあまりない。ましてや、この状況では和也と望が会える時間というのは少なくなるに決まっているからだ。

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