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ー過去ー32

 いや、たとえ和也が望のいる部屋に入れることになっても、裕実が今は望とコンビを組んでいるのだから、和也と望が二人だけの世界になれることは、ほとんどなくなってしまったのかもしれない。  望はため息を吐くと、 「何で、こういう時に限って……裕実と和也が交代しちまったんだか……」  そう望はロッカールームで呟く。  望がロッカールームから出ると、もう時間になっていたのか、裕実と一緒に今日からしばらく仕事を始めることとなった。  仕事を始めると、前の時とは違い、裕実はドジなんかせず、和也同様に望が仕事をしやすいようだ。なんでもかんでも仕事をこなす裕実の姿に、今度は望の方が見惚れそうになってしまっているくらいなのだから。  それから仕事を終え、裕実と望は部屋へと戻って行く。  部屋へ戻ってきても、裕実の方は黙々と仕事を始め、望は書類に目を通していたのだが、何か足りないような気がしているのは気のせいなのだろうか。  いつもなら、うるさいと思うほどに和也のトークが始まる時間なのに、今日はそれがない。  それだけで、今日の望は自分の部屋で仕事をしている感じがしないように思えてしまう。本当に和也がいないだけで、こんなにも部屋の雰囲気は違うものなんだろうか。  いつもと同じ部屋なのに、和也がいないと思うだけで逆に落ち着かないのは気のせいなのだろうか。逆に仕事に集中できないでいる。  しばらくしてドアが開く音が聞こえ、和也が部屋に入ってくる。 「あれ? 裕実……まだ、掃除終わってなかったのか?」 「和也の所は二人でやってるのですから早く終わってしまうのかもしれませんけど、僕の方は一人でやってるんですよ……早く終わる訳がないじゃないですかー」 「ま、正確には実琴に部屋の掃除を任せてきたっていうのがあるんだけどな」  和也はそう言いながらソファへと腰を下ろす。 「それって、ズルなんじゃないんでしょうか?」 「ズルなんかじゃねぇよ……そこは指導だって言ってくれねぇかな?」 「指導って言うんだったら、そこは和也が見てないのだったら指導とは言いませんよー」 「そりゃ、そうか……」  一旦、和也はソファに座ったものの、裕実のその一言で立ち上がると、 「裕実……手伝うよ……」  和也はそう言うと掃除用具の中から掃除用具を出し、裕実と一緒に掃除を始める。  一方、望は和也が来たことで安心したのか、仕事に集中することができたようだ。  その証拠に、望は微笑みながら仕事をしているのだから。

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