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ー過去ー33
いつもだったら和也に向かって「うるさい」と言っていたのだが、もう和也と仕事をして何年も経っているのだから、和也が部屋にいる方が望にとってやりやすいのかもしれない。
「……で、和也……本宮さんと新城先生の様子はどうなんですか?」
「だから、さっそく、俺は二人だけにしてきたんだよー」
「そういう事だったんですかー。ただのサボりじゃなかったって事ですね」
和也はその裕実の言葉に転けそうになったが、すぐに体勢を戻すと、
「あのな……流石の俺でも、仕事は真面目にやってるって。しかも、お金もらってるんだから、そこは当然働くに決まってんだろ?」
「なら、掃除は?」
「まだ、それについて言うか? 向こうは確かに実琴には任せて来たけど、こっちではやるって言っただろ? それに、任せたのは掃除だけなんだからよ。そうそう! それに俺がこっちの部屋に来た理由っていうのはさ、とりあえず、俺が実琴から早々と離れるっていう事だったしな。実琴はこの病院で働き始めたばっかりだから、例え隣の部屋でも自分に与えられた部屋しかいる事が出来ないのだから、頻繁に望の部屋に来る事は出来ないだろうが……」
「まぁ、確かにそうですけどー。でも、その人の事が好きなら、終わった後にどっかで待ってる可能性だってあると思うんですけどね。僕ならそうしますけどー」
「あー!」
和也は裕実の言葉を聞いて急に大きな声を上げる。
「ほらね……和也って考え方はいいんですが、いつもこう何処か抜けてる所があるんですよねー」
「確かにアイツなら、俺の事待ち伏せしてる可能性はあるなー」
二人は掃除を終わらせるとソファへと腰を下ろす。
「一回そういうのあったんだよなー。ちょっとパターンは違うんだけどさ。学生時代に休みの日にさ、前日に『明日の9時に駅前でな』って約束して、俺さ、そん時に寝坊しちまったんだよ。そう! 起きたらもう時間は十時を過ぎていてな……で、そん頃っていうのはまだ携帯が出来たばっかりでまだ携帯なんか持ってなかった頃だったんだよなー。だから、とりあえず、俺はアイツの家電に電話したんだけど、もう、電話には出なくてさ、もしかしたら、まだ、駅前にいるのかもしれないって思って急いで行ったんだけど、もう、その頃には約束の時間から三時間は過ぎてたのかな? もう、俺の中では待ってないだろ? って思ってたんだけど……アイツ、駅前で待っててくれたんだよな。しかも、そんだけ待たされたんだから普通は怒るもんだろ? でも、アイツは怒らなかったんだよなぁ。後でアイツに聞いたらさ、『僕的には人を待たせるのは嫌いですが、待っているのは全然平気なんですよ。確かにイライラしますけど、来てくれた時に謝ってくれたら、そのイライラも吹っ飛んでしまうんでね』って言ってたんだ。だから、裕実の言う通り待ってるっていう可能性が高いかなーって思ってよ」
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