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ー過去ー34

 和也は大きなため息を漏らし、ソファに背中を預けて天井を見上げる。 「和也にしては珍しく疲れたって感じがしてますね?」 「そりゃ、そうだろー。あー、マジ無理……何も考えらんねぇ」  きっと今の和也はもうお手上げ状態なんだろう。あまり不満を口にしない和也さえも不満を口にしてしまっているのだから。 「ならさぁ、とりあえず、熱り冷めるまで、ここに泊まったらどうだ?」  今まで黙っていた望だったのだが、望にしては珍しく和也に提案する。 「んー……それでも俺は構わないんだけどー」 「なら、そうすればいいじゃん。裕実も別に構わないぜ。ここに和也と一緒に泊まってもさ」 「せっかく望さんからの提案なんですから、和也そうしますか?」 「そうすっかー」  望の提案で、和也がいつも通りの笑顔を見せ、望も裕実も安心したようだ。 「じゃあ、俺は仕事終わったし帰るなぁ」 「ああ」  望は席を立つとロッカールームへと向かう。 「僕も望さんが出て来たら着替えますね」 「そうだな」  暫くして望がロッカールームから出てくると、それと入れ替わるように裕実がロッカールームへと消えて行く。  それを見計らって、望は和也がいるソファへと近付き、 「あのさぁ、今だから少ししか話できないんだけどさ……今日、朝、俺親父んところに行っただろ?そん時に親父から聞いたんだけどさ、やっぱり、裕実と本宮実琴は兄弟なんだってさぁ」 「……はぁ!?嘘だろ!?」  と和也がそう声を上げた途端、咄嗟に望は和也の口を塞ぐ。 「あ、ゴメン……驚きすぎた……」  望は辺りを見渡すと、まだ裕実の方はロッカールームから出てきていなかった。そこで安心すると、 「アイツ等の本籍だよ。ほら、採用されたら色々と書かなきゃならないだろ?それと出してもらわなきゃならない書類とかもあるって訳だ。それで、親父は気付いたらしいんだけどな」 「なるほどなぁ、本籍かー。俺達の中じゃあ、そんな事絶対に思いつかなかったよな?これで確かにスッキリはしたけど、余計、謎だけは残ったかもな」 「まぁな……。でも、まぁ……一つ裕実と本宮実琴の事は問題解決出来たからいいんじゃねぇのか?」 「ああ、まぁな」

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