1304 / 1546
ー過去ー38
初めて二人が会った時というのは最悪だった。雄介は望のことを女医さんだと勘違いし、それを耳にした望はムカついていた。だが、望はあることがきっかけで雄介を見る目が変わったのだろうか。だから今はもう、望と雄介は付き合っている。
あの時、二人が出会わなかったら、今という幸せな時間はなかったのかもしれない。
「雄介……ありがとうな。あの時、お前が告白してくれなかったら、今こういう時間はなかったってことだろ?」
その望の言葉に目を丸くする雄介。
だがふっとあることを思い出し、一瞬頭を抱えた雄介だったが、すぐに前向きに考えたのか笑顔になって、
「確かにあん時、望に会わんかったら、今の俺って奴はおらんかったかもな……せやから、一年前に乾杯や」
望は雄介のその言葉にクスリと笑うと、
「なんだよそれ、一年前に乾杯って……」
「一年前にも今にも乾杯や」
「ん? まぁ、意味が分からないけど……雄介が楽しいならいいか」
「ああ、めっちゃ楽しいわぁ……ついでに言えば、望に出会えたことが最高の乾杯やな」
「今日のお前は何でもかんでも乾杯なんだな」
「そりゃそうやろうなぁ、むっちゃ幸せなんやから」
「乾杯って幸せな時にするもんなのか?」
「知らん……でも、だいたいそうなんやない?」
「まぁな……正確には祝い事に関してはつきものってことか……」
「せやね……っと……ケーキ……ケーキ……」
そう言いながら雄介は席を立つと、冷蔵庫にしまっておいた二人分のケーキを出してくる。
「ホールで買うて来ても良かったんやけどな……二人じゃあ食べきれんやろうって思うて、二つしか買わんかったわぁ」
「それで、いいんじゃねぇのか?俺の方はそんなにケーキなんか食う方じゃねぇしな」
「せやな……ほな、これで良かったって訳や」
「ああ、正解。あのさぁ、ワインもステーキもだけど……全部お前が選んで来たのか?」
「俺が選んでこんで誰が選ぶんや?」
「いや……そうじゃなくてさ……。なんつーのかな? あのステーキは自分で作ったんだろ?なんかステーキはどこかお店で作ったって感じだったし、ワインもすごく美味かったしさ」
「ああ、そういうことな。ステーキは本見て作ったしー、ワインは分からんかったから、まぁそこは適当に選んだんやけどな。美味かったんやったら良かったわぁ」
ともだちにシェアしよう!