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ー過去ー38

 初めて二人が会った時というのは最悪だった。雄介は望のことを女医さんだと勘違いし、それを耳にした望はムカついていた。だが、望はあることがきっかけで雄介を見る目が変わったのだろうか。だから今はもう、望と雄介は付き合っている。  あの時、二人が出会わなかったら、今という幸せな時間はなかったのかもしれない。 「雄介……ありがとうな。あの時、お前が告白してくれなかったら、今こういう時間はなかったってことだろ?」  その望の言葉に目を丸くする雄介。  だがふっとあることを思い出し、一瞬頭を抱えた雄介だったが、すぐに前向きに考えたのか笑顔になって、 「確かにあん時、望に会わんかったら、今の俺って奴はおらんかったかもな……せやから、一年前に乾杯や」  望は雄介のその言葉にクスリと笑うと、 「なんだよそれ、一年前に乾杯って……」 「一年前にも今にも乾杯や」 「ん? まぁ、意味が分からないけど……雄介が楽しいならいいか」 「ああ、めっちゃ楽しいわぁ……ついでに言えば、望に出会えたことが最高の乾杯やな」 「今日のお前は何でもかんでも乾杯なんだな」 「そりゃそうやろうなぁ、むっちゃ幸せなんやから」 「乾杯って幸せな時にするもんなのか?」 「知らん……でも、だいたいそうなんやない?」 「まぁな……正確には祝い事に関してはつきものってことか……」 「せやね……っと……ケーキ……ケーキ……」  そう言いながら雄介は席を立つと、冷蔵庫にしまっておいた二人分のケーキを出してくる。 「ホールで買うて来ても良かったんやけどな……二人じゃあ食べきれんやろうって思うて、二つしか買わんかったわぁ」 「それで、いいんじゃねぇのか?俺の方はそんなにケーキなんか食う方じゃねぇしな」 「せやな……ほな、これで良かったって訳や」 「ああ、正解。あのさぁ、ワインもステーキもだけど……全部お前が選んで来たのか?」 「俺が選んでこんで誰が選ぶんや?」 「いや……そうじゃなくてさ……。なんつーのかな? あのステーキは自分で作ったんだろ?なんかステーキはどこかお店で作ったって感じだったし、ワインもすごく美味かったしさ」 「ああ、そういうことな。ステーキは本見て作ったしー、ワインは分からんかったから、まぁそこは適当に選んだんやけどな。美味かったんやったら良かったわぁ」

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