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ー過去ー40

 またまた素直にすらすらと言う望に、一瞬目を丸くした雄介だったが、次の瞬間には微笑み、 「そうやな……今が幸せやったら、過去の事は思い出になるって事やんな」 「そういう事だよな。あ! そうだ!」  望は急に何かを思い出したかのように大声を上げ、手を叩く。 「あのさぁ、昨日は和也達が家に来てて話してたんだけどさ」 「道理で今日、朝お皿洗った時に皿が六枚もあったって事やんな」  雄介は望の言葉に独り言のように返すと、 「……で?」  と、話の先を促す。 「ああ、でな……話は昨日の朝からになるんだけどさ。昨日の朝、新しい看護師が病院に入ってきたんだよ。で、和也が俺のために薬を取りに行った時に、そいつと会ったんだって。で、和也が朝から血相を変えて部屋に戻ってきたんだけどさ……そいつ、和也が専門学校に通ってた時の恋人だったらしいんだよ。それで、その看護師とはまだ完全に別れてなくて、しかもそいつはまだ和也の事を諦めてなかったらしいんだよな。だから、和也の事を追いかけて、うちの病院に来たらしいぜ。それでさぁ、そいつの名前が本宮実琴って言うんだけど……その名前を聞いてピンとくるもんがないか?」 「んー……」  雄介は少し考えた後、 「あー!」  と、いきなり大声を出し、 「裕実と同じ苗字やんかー!」 「そういう事だ。でもさ、裕実に聞いてみても本宮君に聞いてみても、二人とも揃って『絶対に違う!』って否定するんだよなー。それに、本宮君の方は施設で育ったって一点張りだし、裕実は家庭で育ったって言うしよー。でも、もしその二人が兄弟だったら、二十五年振りの再会なんだし喜ばしい事なんじゃねぇのかな? って思うんだけどな。でも、二人にとっては違うみたいなんだよな」 「何か家庭で問題でもあったんかな?」  雄介にしては珍しく的確そうな意見に、望は反応し、 「……家庭で問題が?」 「とりあえず、その新しく入ってきた看護師さんは施設で育ったって言うてんのやろ? それなら、それなりの理由があるんやないかな? って思うてな」 「でも、本宮君の方は気付いたらもう施設にいたって言ってたぞ。だから、その施設に入ってた理由が分からないんだよな。ま、推測ばかりしても仕方ないし、それは置いといてだなー。ま、まぁ……その話の続きみたいなもんなんだけどさー」  望はそこで一旦、息を整えると、

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