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ー過去ー53
雄介に続き、望も「いただきます」と言って、二人でご飯を食べ始める。
「望……しっかり食べてな」
「ああ、分かってるよ」
「なんやろ? お前見てると心配になってくるんだわぁ。俺と一緒に食べてる時はええねんけどな、俺がいない時っていうのはどうしてん?」
「それは、ほとんど和也が作ってくれるよ。まぁ、アイツの場合にはお前とは違って簡単な焼きそばとかになってしまうけどな」
「そんなんじゃあ、腹張らんやろ?」
「アイツも仕事終わってから作ってんだ。そこは文句言わないかな? 早く作れて美味しいもんが食えるだけでいいんじゃねぇのか?」
「ま、確かに……そうやねんけど……」
どうやら雄介は、和也が作ってくれるご飯が気に食わないようだ。だが、望の言い分も分からなくはないといったところだろうか。それでも雄介の表情は、少し「まずいよな?」という顔をしていたようだ。
「あのな……和也だって、簡単なもんでも一生懸命作ってくれてんだぞ。作ってくれてるんだから、何も言えないだろ?」
「そりゃ、そうねんけどなぁ?」
「まだ、不服そうな顔してんだけど? 何か不満なことでもあるのか?」
「ん、まぁ……」
「なら、作っていくとかしたらいいんじゃねぇのか?」
「そんな暇は流石にあらへんわぁ。朝のこの貴重な時間を望と過ごしたいしな」
「なら、文句言うんじゃねぇよ。それに、たとえ和也がいなかったら、俺一人だったらもっと酷いもん食ってるかもな。インスタントラーメンとかレトルトカレーとかな」
「もう、ええわぁ……分かったって……これはもうこれ以上俺の方は何も言わへんし……それで、ええねんやろ?」
「つーかさ、お前さぁ、なーに朝から突っかかってくるんだよ!」
「そりゃ、突っかかりたくもなるわぁ」
雄介は溜息を吐くと、
「……ってか、望が和也の肩を持つからやろ?」
「そりゃ、そうだろー、俺たちの仕事は雄介の仕事とは違って、仕事を終えてからご飯を作ることになるんだぞ。それを分かってくれないお前が悪い」
「せやな……確かに俺が悪かったわぁ」
そう納得したように言う雄介だが、実際にはそうは思っていないのかもしれない。気持ちとしては無理やり納得していると言うか、喧嘩したくないからそこで止めておこうとでも思っているのだろう。そのため、どこか喧嘩腰のような口調になってしまったようだ。
「それに、お前なぁ……朝からキスとかしたってええやんかぁ。俺たちは恋人同士なんやからな!」
どうやら雄介は、今まで我慢して溜め込んできたことをまとめて吐き出してしまったようだ。さっきまでは全く触れていなかったのに、何か吹っ切れたようで、今になって言ってしまっているのだから。
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